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負けちゃったね。なんでだろうね。最後の夏。アルプススタンドに向かう選手を見てると、無性に涙が溢れてくる。
負けたのが悔しくて、泣いてるんじゃないんだよ。
最後だから。みんなと一緒にいられる夏が終わっちゃうから。だから、みんな泣いてるんだよ。
だって、亮の帽子にも、書いてあったもん。
『このチームで、甲子園に行く‼︎』
あのばかだって、少しでも夏が長くなるように、頑張ってたんだよ。
あれ、なんか、ヤバい。私史上一番泣いてるかも。
全然、涙止まんない。
選手のみんなが、戻ってきた。みんな、これが最後なんだよね。
「ひと…」
亮。ばか。なに泣いてんの。らしくないよ。そんなにボロボロ泣いて、涙もろい山川は泣いてないじゃん。なに山川に支えられてんの。
「ごめん。俺…。みんなと、もっと野球がしたくて。でも…」
思わず、亮の頭に帽子を被せた。だって、どうしたらいいかわかんないし。
ヤダ、そんな見ないでよ。私の顔。めっちゃ涙でぐちゃぐちゃになってるから。
でも、でもね。亮。言わせてほしい。これだけは…。
「…ありがと、亮」
「え…?」
「負けても、勝っても…。私のヒーローは、亮だから」
夏が終わる。みんなとの夏が。
みんな、みんな、この夏のヒーローだったよ。
しばらく野球はできなくなるけど、でも、まだまだ思い出は作れるよね。
たくさん、たくさん、思い出作ろうね。
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