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「気を使ってくれる気持ちは嬉しい。けど、アタシだって、ルカを満足させてやりたいんだ」
「でも、」
「いいから、ルカは黙ってて。続き、してあげるから」
二階堂はそう言うと、再び、ルカの股間に顔を近づけた。
「え、二階堂さんっ、あン!」
大きく開いた口が、ルカの猛ったままの肉茎を呑みこむ。舌先で凹凸の一つ一つをなぞられる。雫を溢す小さな孔を広げながら、抉られる。
唾液を塗りこめるように音を立てて舐めあげられ、ルカは反射的に腰をくねらせる。逃れようとしても、二階堂の顔はぐっと沈みこみ、さらに奥まで咥えこまれる。巧みな舌使いで追いあげられていく。
同時に、蜜液でドロドロに汚れた窄まりへ、二本の指が入ってきた。
燃えるように熱く、過剰に潤んだ入口は、二階堂の太い指を嬉しげに迎え入れる。自分でも嫌になるくらい、容易に呑みこみ、もっと翻弄してほしいと暴れだす。
「んぅ、ふっ、そこ、ダメぇ……」
グリュグリュと内側から前立腺を擦りあげられて、甘い悲鳴が漏れる。陰茎がガチガチに強ばる。
つくづくΩの体は不思議だ。受精はできないのに、人並みに射精する。とはいっても、発情期の最後のほうには出すものがなくなって辛いくらいだ。
内からも外からも責められるのがたまらない。
こんなことをするのは二階堂だけだ。二階堂以外の客は、ルカのことは道具としか見ていない。自分が気持ちよく、イくことしか考えていない。
こんなにルカを思ってくれる人は、他にいない。
ただ溺れる。気持ちいいことだけを追い求める。
陸に打ちあげられた魚のように、手足をばたつかせ、腰をねじり、尻を揺する。快感が強烈すぎて、刺激されている粘膜が麻痺したようになっている。
「あっ、いい、イイ……すごいっ」
蜜液で濡れそぼった奥の粘膜を激しく擦られる。頭を前後に動かし、ジュポジュポ音を立てて咥えこまれる。
ルカは限界だった。
「あ、も、もうっ、でちゃう。離してッ!」
抑えきれない。このままでは、二階堂の口へ放ってしまう。腰を引こうとするが叶わない。強い吸引力で、ルカの陽根を吸いあげる。
「っあ、ひぅ、アアアアッ!!」
とうとう、こらえきれなかったルカは頂点まで昇りつめていた。
小さく跳ねて、二階堂の口腔に放ってしまう。ルカを見上げる二階堂は、逸物を口から離すと、目を細めて嚥下した。二度、三度と喉仏が上下するのがわかる。
「に、かいどう、さん………どうして、」
「いいじゃないか、ルカ」
「でも、これは、」
「アタシがいいって言ってるんだから、いいんだよ。ルカの、まだ濃厚だったよ」
「や、やだぁ……」
恥ずかしさにたまらなくなって、両手で顔を覆う。夢中で抱き合っている時は気にならなくても、一方的にされると羞恥心がこみあげてくる。
「ごめん。嫌だった?」
「いやっていうか、恥ずかしいよ」
「ごめんね。ルカの恥ずかしがる顔見るのが大好きでねえ」
「趣味悪いって言われない?」
「みんなに言われる。ね、ルカ。そろそろ、機嫌なおしてよ」」
二階堂の体に包みこまれるように抱きしめられる。逆らえるわけなんてない。彼の匂いとぬくもりが、なによりもルカを安心させるだから。
「今週中にもう一回くらい来たかったんだけど、ちょっといまバタバタしててね」
「お仕事忙しいんだ?」
二階堂がなにをしている人か、ルカは知らない。この一年以上、裸で抱き合って、体中の弱点をさらしあっている。なのに、普段の生活のことを、なにも知らないのだと気づくと苦しくなる。ルカも、自分のことは話していなかった。
「いまの部屋、引越ししようかと思って。まだ二ヶ月しか経ってないんだけどさ」
「え? じゃあ、なんで? 欠陥住宅とか?」
「職場に近くて、わりとキレイで、安かったから即決しちゃったんだよ、事故物件」
事故物件というのは、アレだ。
事故や事件現場など、ニュースになるような刃傷沙汰があったり、ご遺体が放置されちゃって液状化したり、火災が起きたりといういわくつきの物件のことである。
「で、出るんですか……?」
「なーんかねー、変な物音はするし、時々変な臭いもするし。あと、最近、日に日に体が重くなるっていうか、肩の上に鉄板が載ってるっていうか。マッサージ行っても、全然治らないし。あ、部屋にいると、電話も繋がりにくい」
「それ、明らかに、なんかいるじゃないですか!」
「そうなんだよね。気にしなきゃいいやって思ったんだけど。前に住んでたマンションも、別の階で殺人あったしさ。旦那さんが、浮気してた奥さんを刺し殺して、自分も車で事故っていうか、自殺? その時は、なんにもなかったから、アタシは鈍いみたいだからいいやって思ったんだよねえ」
二階堂の呑気な口調を聞いていると、なんでもないことのように思えるが、そうではない。電話が繋がりにくいというのも変だ。
「危ないですよ! すぐに引っ越してください。なにかあってからでは遅いんです」
「ルカはさ、霊感とかある? そういうの信じるほう?」
「え、いや、あるような、ないような」
なにか不思議なものが視えるわけではないが、明らかにゾクっとすることはある。いわくつきの場所の時もあれば、なんでもないところでも違和感を覚えることがある。
「じゃさ、来週の月曜の午後に内見行くつもりなんだけど、つきあってくれない?」
「はぁっ?!」
「アタシ、昼間ではこの事務所にいるから」
そう言って手渡されたのは、一枚の名刺だった。
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