シーナのとまどい(Ω×Ω)

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「俺、ずっと、鞠村のこと好きだった。こうやって、愛したいと思ってた」 「み、そのぉ、……ぼくも、ぼく、も」  鞠村は御薗生の全身を受けとめると、腰のうしろに手をまわして、ぎゅっと抱きしめた。 「好きだ。いっぱい、俺に愛させて」 「はい……」  御薗生は自分の服も秒で脱ぎ捨てる。遮るものをすべて剥ぎとると、待ちきれない思いをぶつけるように、火照った肌を鞠村へと押し当てた。 「あ、ン……」  もう一秒たりとも待てない性急さで、相手の肌に触れあう。生身の体が切実に相手を求め、浅ましく探りあう。 「……はあああ~」  裸の二人が手足を絡めて、ひたむきに愛を囁く姿を見ていたシーナは、ずるずると床に座りこんだ。  なにがどうして、こうなった。  つとめて冷静になろうとしてはみるものの、甘く淫靡な寝室の空気に当てられて、のぼせあがった頭はまるで働いてくれない。  シーナが座りこんだ位置からは、御薗生の背中しか見えない。それでも十分だった。  初めて、鞠村の隣を歩く御薗生を見かけた時から、頭の形がいい男だと思っていた。張りがあって、溌剌とした声も好もしい。二の腕、背中、腿に至るまで、全体に適度な筋肉がついている。絶妙なバランスで均整のとれた裸体は、彫像のように美しかった。  αの見本のような若い男が、Ωの発情に刺激されている。欲望を剥き出しにして、本能のままに体を重ねている。 「すごい、濡れてる、ここ。すごいね、ほら」 「やあっ……」  Ωの体は本当に不思議だ。  自分の意思ではどうにもならない衝動と、欲求に突き動かされる。発情期が始まったが最後、どうにかしてなだめないといられない。  Ωの後孔はあとからあとから溢れるほどの淫液で潤い、歩行もままならなくなる。脚の間から漏れてくる透明な蜜に気づくと、絶望で目眩がする。自分の体のあまりに動物的な反応に気が遠くなる。  孔を塞ぐものを求めるように、体中の水分が流れていくのだから。 「熱くて、やわらかくて、ヒクヒクしてる」 「っや、んぅ、も、それ、ダメだからぁ……」  涙混じりに訴える鞠村の声が、ところどころ裏返っている。  シーナに抱かれた時とは、反応がまるで違う。発情期だから? αを相手にしているから? 御薗生だから?  覆いかぶさった御薗生の呼吸も荒い。右手を差し入れ、鞠村の後孔に触れながら、動きが速くなる。 「いれたい、もう」 「きて……みそのっ」  御薗生は一体どこに準備していたのか、手早くゴムをつけると、大きく息を吐いた。  さすがαは手馴れている。自分自身を守るために避妊を欠かさないのだろうと、シーナはひょんなことで感心する。 「ん、いれる、よ」  御薗生の震える声が、低くくぐもった呻きに変わる。ゆっくりと鞠村の膝を抱えあげて、挿入の体勢を取る。シーナは息を殺して、成り行きを見守っていた。
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