シーナのとまどい(Ω×Ω)

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「脅すのかよ、あんた。見かけによらず、えげつないな」  シーナがつぶやくと、御薗生は振り返って眉を潜めた。 「ずっと思っていたが、君はなんだ? いったい。どうして、そんなに平気な顔でいられるんだ?」  二人の絡みをガン見していたことを指摘されたんだと思ったが、すぐに違うと気づく。 「ああ。鞠村の、Ωのフェロモンに影響されないのかって? そりゃ、俺がΩだからだろ」 「君が、Ωだって?」 「本当だって。だから、鞠村とは友達、みたいなもん」 「待ってくれ。君は、Ωの友達のことも抱けるのか?」  藪蛇だったようだ。うっかりした一言で、御薗生に不要な懸念を抱かせてしまったらしい。  たしかに今夜、発情期に入ったばかりの鞠村を慰めようとしているのを見られている。 「もう少し返事を待つつもりだったけど、いま、するよ。君の前で、鞠村は俺の番だって見せつけてやる」 「え……」 「鞠村が、かわいすぎるのが悪い」 「え、あ、うそ、もう?」  準備万端になっている様子に気づいたのだろう。反射的に身じろぎして逃れようとする肩を、御薗生に掴まれる。 「最後にもう一度、言わせて。俺の番になってくれる?」  御薗生と鞠村の視線が絡み合う。  番になるって、言え。  αの負担になるとか、変な気ぃまわすんじゃねえ。  いま、一番大事なのは、好きなαと形のある絆を結ぶことだろ。  早く言え。すぐに言え。  番になるって、言え。  シーナは一心に念じていた。ここで鞠村が意思を示さないと、ずっとこじれてしまうと思った。 「御薗生の気持ち、すごく嬉しい。でも僕は、君に相応しい相手に、そうなれる自信がないんだ」 「わかった。自信がつけばいいんだな?」 「御薗生?」 「俺がつけてやる。いま誓う。おまえを、自分に自信が持てる男にしてやるって。だから、ここ、おまえのうなじ、俺にくれ」  鞠村は目を大きく見開いた。たっぷり時間をかけて、ようやく告げた。 「……うん」  ベッドの上の二人は、長い長いキスで思いを伝えあった。  αとΩが結ぶことのできる番の関係は、本来はとても神聖なものだ。  旦那が贔屓の子を身請けするとでもいえばいいか。Ωは一生を、番のαに捧げることを誓約する。αは一生かけて、番のΩを守りぬくことを宣誓する。結婚の誓いよりも、重いものともいわれる。  Ωから番を解消することはできない。αから解消することは可能だが、同時に二人以上の番を持つことはできない。  セックスの最中に、αがΩの首の後ろに噛みつくことで痕跡が残る。噛まれたΩは、番のα以外には発情しなくなる。厄介な発情期が消失する。  なお、Ωがもっとも高ぶっている時に、かつてのαの噛み痕が浮き上がって現れる。 「たまらない。何度でも、味わいたくなる。全部、いい」 「……っ、……ぁう、んッ!」  シーツの上に膝立ちの御薗生は、うしろから鞠村を攻めたてている。両手で尻を鷲掴みにして前後に揺さぶり、激しく腰を使って貫いている。  本能のまま肉欲に溺れて貪り合っている姿は、獣の交尾に似ていると言われる。だからどうした? 人間だって獣だろう?  深く突きあげられる度に、鞠村の口から苦しげな声が漏れる。淫液が溢れて濡れそぼっている隘路の奥、発情期の間だけ降りてきている子宮口に届いているのだろう。いまのΩなら、受精できる。 「体の相性も、最高だ。もう離さない。一生、俺に縛りつけておくから。覚悟して」 「あぁンッ……いい、イイッ」  かすれた声がどうにも艶かしい。鞠村が与えられている快感の凄まじさを伝えてくる。 「愛してる」 「あ、あ、ぼくも……ぉ」 「……もらうよ」  御薗生は、鞠村の無防備な背中を撫で、首の後ろに唇をよせ、大きく口を開けて犬歯を立てた。
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