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神蔵は体温が高い。
平熱三十七℃というから恐れ入る。神蔵に手を握られると熱が伝わってくる。こうやって抱き合えば、互いの熱に煽られて、もっと熱くなる。
「ンぅ……」
内側を探る指を意識しつつ、下腹に圧をかける。ギュウギュウと締めつければ、神蔵は乳頭に歯を立てる。
イヴの性器がぐんと硬さを増して、神蔵の胸に当たる。先走りで濡れたものが二人の体の間で圧迫される。卑猥な仕草で腰を押しつけて誘う。
初めてした時には、あんなに抵抗があった行為なのに、堕ちるのは早いものだと、つくづく思う。快楽を知った体は、以前とはまるで別物だ。どっぷりと淫らな熱に染まっていく。
「ああっ、も、もうっ、かぐ、らァ」
大きく広げられた脚を神蔵の背中で絡ませる。二人の体は汗ばんでいて、重なり合った肌が滑りそうになる。
肩甲骨を撫でながら、下肢を揺さぶる。息が上がる。苦しいくらい、心臓が騒いでいる。
「……そのまま、欲し、い。今日は、大丈夫、だから。もう、」
神蔵に埋められたい。
空洞のすべてを満たされたい。
体の奥深くで神楽を感じて、熱い飛沫を受け止めたい。
Ωといっても、発情期でなければ普通の男性と変わりない。孕むことはないのだから。
「せっかちだなあ、もう」
三本の指が引き抜かれる。肉襞の擦れていくのを感じて、喉を鳴らした。
イヴの平らな胸に顔を埋めていた神蔵がせりあがる。鼻先がぶつかるほど近づいて、口づけられた。
「ん、ぅ、……」
恐る恐る差し入れられた舌を捕らえる。隙間なく合わさった口腔を行き来して、余すところなく舐りあう。舌を絡めて、唾液を混ぜ合う。
猛り立った二つの肉茎が擦れる。互いの腹で挟んだそれは、どちらのものともわからない粘液で濡れ、はちきれんばかりに膨張している。
我慢できなくなったイヴが手を伸ばして両方ともつかむ。二本まとめて捏ねていると、神蔵に手首を握られていた。
「イヴの中に、入りたい」
欲情のにじむ声は、それだけでイヴの全身を震わせる。望むところだった。体の奥で、神蔵を感じたい。
「ん、きて」
イヴは両手を神蔵の首のうしろにまわした。膝を立てて、両脚を大きく開く。
ここに欲しい。どろどろに溶けるまで、神蔵と愛し合いたい。
「あいしてる」
神蔵の言葉とともに、そこを穿たれた。
イヴはゆっくりと息を吐きながら、人一倍立派な神蔵のものを受け止めた。
少しずつ慎重に押し入ってくる肉に圧迫感を覚える。
内臓を押され、骨が軋んでいる。けれど、待ち望んでいた熱が与えられ、イヴは頭のてっぺんから爪の先まで、多幸感で満たされるのを感じて、目を閉じた。
「……っ、きついな。締めすぎだよ」
絞りだすような神蔵の声がどうにも艶かしくて、イヴの肉筒はさらにキュンと締まる。下腹に力をこめる。このまま、神蔵の形になればいい。神蔵でしか感じない体になればいい。
イヴがΩなのは変えられないし、神蔵の番にはなれない。儚い願いだとわかっていても、祈らずにはいられない。
神蔵にも、もっともっと感じて欲しい。気持ちよくなって、忘れられなくなって、いつまでも覚えていて欲しい。体だけでも、刻みつけておきたい。
αとのセックスは格別だ。
なにもかも違う。一度、覚えてしまえば、中毒のように欲しくなる。逞しく精悍な極上の体、貪欲なΩを悦ばせてやまない性欲の強さ。αとΩの組み合わせは、パズルの凸凹のようにぴったりと噛みあう。
αが欲しい。αのすべてに、身も心もゆだねてしまいたい。
Ωの本能は呆れるほど正直だ。
この男が欲しい。この男の子どもが欲しい。他にはなにも考えられない。
だから、求める。全部よこせ、と。
浅ましく、貪婪に、求めて求めて、求め続ける。
セックスは求めても、他のモノは一切求めない。
『おまえを、愛してる』
なんて甘い言葉、絶対に言わない。愛を告げれば、おまえが困るのがわかっているから。言えない。
心とか、約束とか、契約とか、なにも要らない。だから、体くらいはよこせ。そう告げれば、彼は少し眉をよせながら応じてくれる。
『おまえと、こうやって抱き合ってる時間が好きだ』
そう言うと、おまえは嬉しそうに頷く。
俺は、その顔が好きなんだよ。
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