ルカの異変(β×Ω)

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 ルカと二階堂は不在の時間を埋めるように、激しく抱き合った。  寝落ちしそうになりながらも、どうにかしてシャワーを浴びると、一つのベッドで泥のように眠った。  断続的な甲高い電子音を聞いて、ルカは寝返りをうった。  スマホのアラームだけど、とても起きられそうにない。学校? 一日くらい休んでもいい。いや、一コマくらい、いいだろう。毛布をかぶって、あたたかな世界に潜りこむ。  そこにあるはずの二階堂のぬくもりが、なかった。 「ルカ。スマホ鳴ってるよ。いいの?」  くるまった毛布を剥ぎ取られ、冷たい空気と直面する。アラームうるさい。  二階堂さんも、こんな朝早くから身支度済んでるとかありえない。 「さ、さむい、ムリ……もう、今日はこのままで」 「ルカがいいなら、いいんだけど。大丈夫? 昨日は無理させたから心配で。体がきついなら、病院で診てもらったほうが」 「……それだ!」 「え?」 「病院、行かなきゃ」  渡されたスマホを見て、時間を確かめる。 「ここからだと、地下鉄三本を乗り継ぎだから。まずい。時間ない」 「どこが悪いんだ?」 「え、いや。どこって、いうか、その」  レーヴで天宮に定期検診を勧められた経緯を手短に話すと、二階堂は頷きながら言った。 「わかった。アタシが車出すから。一緒に病院へ行こう」 「え、でも、仕事が忙しいんでしょう?」 「いいよ。一段落したから。今日は休みにする。夜だけ、人に会う用事があるんだけど」 「すみません。なんだか、迷惑かけてしまって」 「ルカ、なんでそんなに遠慮するの? もっと頼って欲しい。迷惑なんて、思ったことはないんだから」 「うん。ありがとう。あ、時間が」 「着替えておいで。パンなら、車の中で食べればいいから」  乗り継ぎが複雑で、駅からも距離のある専門機関だったので、車で送ってもらえたのは助かった。とはいえ、道路も混雑していたので、結果的に予約時間にはギリギリになってしまったが。 「二階堂さん、あの」 「なあに?」 「車運転すると、ヒト変わるって言われませんか?」  渋滞を抜け出た途端に、荒々しい運転で目的地へ突っこんでいった二階堂の隣で、ルカは真っ青になっていた。 「車酔いするほうだった?」 「いや、そうでもないんだ、けど」  どちらにしろ、あまり食欲がなくて、オレンジジュースしか飲んでいなかったのが幸いだった。満腹の状態で左右に振られていたら、確実に気分が悪くなっている。 「え、病院についてくるんですか?」 「あのね。アタシはルカのパートナーじゃないの?」 「あ、はい。すみません」 「今度から、ルカが無意味に謝る度に、罰則にしようかな。なにがいいかな」 「どうせ、エロいこと考えてるんでしょ……」  ルカが指摘すると、二階堂は涼しい顔で鼻歌を漏らしていた。  早足で中へ入り、受付を済ませると、首からさげるタイプのカードホルダーを渡された。診察券と受診票が入っている。  案内された通りにエスカレーターで四階へ向かい、Ωの専門科に手にしていたフォルダーを渡した。番号を呼ばれるまで待っているように言われ、並んで腰かけた。  病院の空調は効きすぎていて、汗ばむくらいだった。コートを脱いで丸める。予約制のため、ラウンジで待っている患者は他に三名しかいない。 「緊張してるね」 「……うん」 「大丈夫。なにがあっても、アタシがついてるから」  隣に座る二階堂が、ルカの手を握ってくれた。  いまのルカと二階堂は、他人からはどんな風に見えるだろうか。  どう見えてもかまわない。二階堂は、ルカにとって、かけがえのないパートナーに違いないのだから。
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