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良い子?
「まいそう…?」
「創太には、ちょっと難しいかな?」
庭の花壇を指差す。
「あそこにね。埋めてあげるの。死んじゃった鳩さんとね。バイバイするんだよ?」
「埋めるの?」
「そう。埋めるの」
「ダメだよ」
「どうして?」
今になって、悪いことをしてしまったと自覚が湧いたのか、創太は首を横に振る。
「…創太。ちゃんと、バイバイしようね?」
「命を粗末にしちゃいけない」
「そうだね…」
鳩の亡骸を見つめる。
…どうして、こんな良い子が、こんなことを…。
「ちゃんと」
「…うん」
「食べて、あげないと」
「え…?」
(何を言ってるの?)
振り返った瞬間、首筋が熱くなる。
皮膚が焼けるような、熱い痛みと、ドロリとした生ぬるい液体が首筋から全身を這う感触がして…。
わたしは、自分が血を流していると知った。
「ど…どうして…」
「命を粗末にしちゃいけないって…」
全身から力が抜けて、地面に倒れる。
「お父さんに、教わらなかったの?」
地面から見上げた、創太の顔は。初めて見る、笑顔だった。
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