高谷組へ

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ぼーっとしていると通路の方がとても騒がしい 「ーーーー!!!あのクソ親父!ぶっ殺す!!!!」 これは…玄白の声だ。何かあったのだろうか?と思っていたら玄白はすぐに戻ってきた 「…すまん。聞こえたか?」 「…まぁ、あれだけデカければ…」 「とりあえず、親父が会わせろって聞かねぇから会え。妙な嘘はつくなよ。すまん。身体ダルいだろ。」 それもこれもお前のせいなんだけど…まぁいい。 一般市民の俺がどこぞの組長様に逆らえるはずもなく、玄白の後を歩いていくと大きな広間に連れていかれた そこには渋いダンディーとでも言うのか。顔の良いオジサン…いやおじ様と強面の男がいた 「連れて来たけど余計な真似したらマジで殺すからな」 横にいる玄白から初めて垣間見るその殺気にヒヤリとする。自分に向けられたものでもないのに背筋がゾクゾクした。 空気が冷たい 「お前が玄白を唆した男か」 「違う」 ダンディーな男の口から全てが発せられる前に反論してしまった。が。間違ってはいない。むしろ俺は被害者なのだから。 というかなぜ隣の強面の男はこの状況で笑っているんだ? 「だから言ったろがコイツは俺のネコちゃんなんだよ。だから飼ってもいいかって聞いてんだろ?」 「それも違う。俺は許可してないしそもそも…」 ねこ違いだ…と言おうとしたその時、腰に響く先程までの情事を思い出させるような艶のある声が囁いた 「お前はもう俺のモノだ。マーキングしたろ?それとも…コイツらの目の前でされたいか?」 その声に思わず足の力が抜けて座り込んだ 「…ッ…!お…まえ…!それは…ッ反則…だろ…」 「まぁな。で、許してくれんの?」 「…好きにしろ。人攫いと思われないように親に連絡だけしとけ」 「分かってる。雅紀、連絡しろ。」 「……連絡…する奴なんて…どこにいんの」 親…か。そんなもの、とっくに俺を捨てて消えたよ。 父親は元々居ないし、母親はろくに帰ってこず中学に上がる頃にはもう他に男を作って出ていった。 定期的に更新される通帳は口止めだろう 「お前、名は…何だ?」 何故この男はそんなことを聞くのだろうか。 「…高谷雅紀。母親とは…名字は違うけど。多分ばーちゃんから貰ってんだと思う。」 そう言うと強面の男と玄白の父親らしき人物が一瞬目を見開いたように見えた 「そ…うか…分かった。最後まで面倒見ろよ」 「分かってる。コイツはもう、俺のだから。手ェ出したら親父でも許さねーよ。」 そんな男に手を引かれながらじゃーな。とケタケタ勝ち誇ったように笑うその顔に少しだけ救われた気がした。 俺の…か…本当に…ずっと…でいられるのだろうか
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