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猫になりたい
「や、すまん。めっちゃ笑った。」
「…良い。それより…何か用か?」
「やー、お前の事が気になってな。さっきの」
「…まぁ…いつもの事だ。」
「なーんだ。ちょっと楽しみだったのに。高谷組の若頭と間違えられる程の不良クン。」
「不良じゃない…」
こんなに会話をするのは何時ぶりだろうか。
人と会話するって…少し楽しい。
「なんで笑ってんの…いや、笑ってる…よな?」
いや、いくら顔が怖くても笑顔くらい…わかる…よな?
「笑ってる…けど…その。久しぶりだから。人と話すの。」
「へぇ。そうなのか?なんでそんなに人を避けてんの?」
避けてるつもりは無いのだけれど、結果的にそう見えるらしい。
「…皆の目が…言葉が…冷たいから。」
分からないけど、何もかも冷たく感じる。そいつらの周りには黒いモヤが出ていて、それが俺を攻撃してくる。
それが痛くて痛くて仕方がない。だから逃げるんだ。
そう言うと玄白は笑って言った
「…お前、案外繊細な奴なんだな。」
「うるせー…俺はただ…友達とか…そんな贅沢な願いは要らないけど…出来たら…猫になりたい…それだけなんだよ。」
「なんでネコ??」
「…愛された事が無いから。それが貰える皆が…羨ましいんだ。笑えるだろ?似合わねぇって分かってる」
それでも。俺はそうなりたい。そうなれたらなって…思っているのに。なぜ押し倒されているんだ?
「へぇ。じゃあ俺がネコにしてやる。」
「…は?いや、例えだぞ?猫になんてなれる訳ない」
「あ?ネコだろ?出来んだろが。黙ってヤられてろ」
なんだコイツ、すっげぇ力が強い…押し返せねぇ…
物凄い力で押し倒す男に全力で抵抗していると耳元で囁かれた。
「…俺がお前をネコにしてやる。好きなだけ鳴け」
その艶っぽい声に思わずドキドキした俺は動きを止めてしまった。それが仇となり、この日初めて会ったその男に時が経つのを忘れるくらい鳴かされた
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