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「また、手を上げたのか。」
コツ……と、私の前にカクテルが置かれる。
いつも頼むのは青いカクテルばかり。
ブルーラグーン、チャイナブルー、クールビューティー……。
1番のお気に入りは、目の前のブルームーン。
青というより、紫に近い。
赤がどことなく混じった色。
だけど、このカクテルは気にならなかった。
ブルームーンをに口をつける。
心が清められるような、爽やかでさっぱりとした味。
いつも絶対に頼むカクテル。
やっぱり、気分が優れない日は、ここで飲むに限る。
といっても、何もない日でも、私はこのバーに来ている。
「しつこい向こうが悪いのよ。こっちは断ってるのに。1発顔にいれたくらいで、大袈裟なのよ。」
「本当に恐ろしい奴だな……。告白に花束なんて、ロマンチックで良いじゃないか。」
ロマンチック。
甘いだけの言葉だ。
舌打ちすると、まぁまぁと男は窘める。
「愛の告白と言えば、赤い薔薇が定番だからな。花言葉は愛しているとか、情熱とかだったか。」
「……愛してるに……情熱……ね。」
繰り返し呟く。
綿菓子のように甘く儚い言葉た。
口に入れた時は甘く、すぐに消えてしまう。
最後は手や口にべたべたした不快感が残るところも同じだ。
「私には似合わないわね。」
馬鹿にしたように笑い、ブルームーンを飲み干した。
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