私の中身は火が通っている

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私はもう、人を好きになれない。 恋だけではなく、何にも熱を上げる事が出来ない。 愛した人も、小さい頃から打ち込んだ趣味も、生きがいにしたもの全て、赤に壊されたのだから。 あいつは、私のものを全て灰色と変え、手の届かない場所へ拐っていった。 もう返って来ない。 あいつは笑って、何も出来ない私を見下ろしていた。 パチパチと鳴らす音も、私を馬鹿にした拍手のようで……。 あれから、私の中は冷えきってしまった。 その時に、心まで壊されてしまったのかもしれない。 好きな物、気になった物を手にしても、昔のような燃え盛る何かを感じなかった。 そう、私の中身は……。 「そうだ。君にイメージカクテルを作ってもいいか?この1杯は奢る。」 突然の言葉に、私は我に返った。 「何よ急に……別に、いいけど。」
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