私の中身は火が通っている

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「違う。恐ろしいとは言ったが……すまない。俺の言葉が足りなかった。」 「はぁ?」 これ程怒っているのに、不機嫌な様子も迷惑がる様子もない。 馬鹿にしている感じもない。 私は段々と、怒りが引いていった。 「意味を込めて、このカクテルを選んだ。ブラッディ・メアリーの意味……昔よく飲んでいた君なら知っているだろう。」 「……。」 よく知っている。 大事な仕事が控えている時。 趣味の大会前や、彼氏とのデート前。 必ず注文した、私の大好きだったカクテル。 「断固として勝つ、よ。」 「正解。そしてもう1つ。」 男は不敵に笑った、ように見えた。 あぁ、そういえば。 店に来て長いけど、気づかなかったのか。見ないようにしていたのか。 「私の心は燃えている。」 彼の髪は、何て美しい赤毛をしているんだろう。
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