私の中身は火が通っている

7/10
前へ
/10ページ
次へ
「やぁ、しばらく来なかっ…………て、何だそれ。」 数日後。 私はバーに来た。 久々だったが、たかが1週間弱。 古臭い内装も、気に食わないバーテンダーも何1つ変わっていない。 「……君が誰かから花束を受け取る日が来るなんてね。それも、赤い花を。」 彼は私と、花束を交互に見やる。 意外な組み合わせと、思うかもしれない。 けれど、何か誤解しているようだ。 「貰ったんじゃないわ。私が買ったの。」 「おぉ、そりゃ尚更珍しい。誰かへの送りぶっ!!!!」 顔に花束を押し付けてやる。 無理やり持たせ、私はいつものカウンター席に座った。 「あんたによ。さっさと受け取りなさい。」 「熱烈な渡し方をするな。おかげで窒息するところだった。」 改めて、花束をしげしげと観察している様子だ。 「赤いチューリップか。成る程。」 そう言うと、頼んでもいないのにカクテルを作り出した。 私は背を向けたまま、返事を待ってやる。 「お待たせ。」 グラスが置かれた音がした。 振り向くとそこには、いつも飲んでいたカクテルがあった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加