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天下分け目の戦い・開幕!
梅雨が明け、強い日差しがアスファルトを照り返す時期がまたやってきた。夏休みを前にして、絶対に負けられない闘いがここにはある。今年の夏休みが楽しく心踊るものとなるか、それとも何の変哲も無いつまらないものになるか、この一戦にすべてがかかっている。窓の外からジィジィと鳴り響く蝉の大合唱を聴きながら、僕は厳格なる闘志を固めて2年3組の教室の扉を開けた。
「泰、待たせたな」
僕はそう告げて教室の真ん中へと進み、泰の目の前の椅子に腰をかけた。
「健太。俺は負けないぞ」
泰は僕に鋭い視線を向ける。
「お互い、用意はいいな?」
そう問いかけてきたのは今回の勝負の立会人の恭平。僕たちは恭平に目を合わせ、深く頷く。
「では、当2年3組学級副委員長であるひかりちゃんへの告白権を巡る対決の開幕をここに宣誓する。位置について、用意!」
僕は目の前にある青いビニール袋に手をかける。泰も同じく、青い袋を自分の胸元へとたぐり寄せた。そして、
「はじめ!」
恭平の合図とともに、僕と泰は同時に袋を破いた。戦いの火蓋が切って落とされた瞬間だ。
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