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 川本先生は、準備室の奥にある先生用の机の前に深く腰掛けていて、私の目をしっかりと見据えている。口元はわかりやすく、への字に歪んでいた。 「わ、真琴来たっ」  さっき顔を合わせただろうに、美果はおかしな驚き方をした。美果はフルートを片手に、所在なさげに傍に立っていた。そも、川本先生からああして呼ばれれば来ない訳にもいかない。逃げたりなんかすれば追い駆けられる。 「マコ、あんたどういうつもりなん。さっき美果にも聞いたけど、期末の五教科全部五〇点ってホントなわけ」  「まあ……」 「え、何、はっきりして」 「そう、ですね。ええ、恐らくはそうだと思います。記憶している通りなら」  実のところ、全て本当に五〇点だったかは不確かだ。それくらいだったと思う程度にしか、点数を覚えようとはしていなかった。  大きなため息を、先生はついた。 「マジ? なんで?」  大きく開かれた先生の目に力が籠る。怖い、と思ったことはない。でも、川本先生は容赦がない。どうしてそんなことをやったのか、当たり障りのない範疇で説明しても、この視線だけは逃してくれない。担任とかとは違う。どうでもいいと無下にはできない凄みがある。
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