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ミナト
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崖っぷちに腰掛け、ストロベリームーンだかブラッドムーンだか知らないが不気味なくらい真っ赤な月が穏やかな波を立てる静かな海を赤く染めているのをただ眺める。
こんな日は無償に死にたくなる。何故なら……。
"ねえ、今日はストロベリームーンっていうんだって。"
"へえ~、綺麗だな。まあ、お前の方がずっと綺麗だけど!"
俺の斜め右後ろに浮かんでいる見ず知らずのカップル。男はバイク事故だろうか?左半身がずる剥けになっているそいつは青白い顔の女を……。
いや、どうでもいい。所謂、普通の人には視えないモノ達が生きている俺よりも存分にイチャコラしてやがる。いつもと違う月が浮かんでいるときはそんな文字通り浮かれたやつらの姿を山ほど見る。
……俺も死にたい。思うだけでなく投身、入水、リスカに首吊り、と実際に死ねる為に色々と試した。
それでも俺はまだ生きている。生かされている……。
幸か不幸か。俺は死ぬことが出来ない、いや、死なせてもらえないのだ。
……きっとこの世に死にたい奴なんて俺だけではない。
生きている者には劣等感を抱いている者、イジメを始め体罰・パワハラ・モラハラ・ブラック企業の社畜など様々な問題が溢れた世界で、生きる為に死に物狂いになり、生きながら死んだ目をしながらこの世に抗っているというのに、死んだやつらの方がよっぽど毎日気楽に楽しそうで生き生きしているのだから死にたくもなる……。
かといって常人は彼らを、目に見えない彼らのそんなリア充さを話したところで理解してくれる他者などいない。信じられるはずもないだろう……。
それが俺の自殺癖の原因だ。
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