7人が本棚に入れています
本棚に追加
立ち上がり適当な枝を身繕いパラパラと本をめくり付箋をしておいたページを開け、本を真似て地面にガリガリと紋様を描いていく。
大きめの丸を軸に五芒星をいくつか描き、アルファベットのようなちょっと変わった文字を描いていく。
゛おい、ミナト。それはなんだ?゛
オレの一連の動作を見ていた彼が不思議そうに尋ねてきたがオレは描き終るまで答えてヤル気はない。いや、答えてやれないのだ。
紋様を描き終え本を脇に挟みポケットからカッターナイフを取り出し左手の人差し指を少し切りつけ血を出す。
ピリッとした痛みがするが呼び出したい相手を念じ指を前に突き出し紋様の上にボタボタと落とし再度本を開いてそこに書いてある呪文を声に出し唱える。
紋様の回りに風がサアサアと吹くが、何も起きない。やはりダメか。
「これはたまたま見つけた悪魔召喚術だよ、無駄だったみたいだけどね」
本を閉じて彼の質問に答えていると先程描いた紋様の回りに風が走る。それはまるで丸で囲った部分だけにつむじ風を吹かせているように……。
諦めて帰ろうとした足が自然に止まり振り返るが吹き付ける風が強い。顔の前で両腕を交差させて覗き見る。
風が強い筈なのに辺りはおそろしいくらい静かだ。木々の葉が擦れる音さえ感じない。
風が収まったと同時にさざ波や木々の葉の擦れる音が辺りを響かせる。
『我を呼び出したのは貴様か?』
静寂を静かにさいたのは悦を含んだ低めの男の声だった。
最初のコメントを投稿しよう!