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『我はザラスシュトラにおけるアストー・ウィーザートゥ!死の「あ、すんません!人違いです」悪魔、、、は?』
声の主である目の前に浮かぶ赤色酸化鉄、つまりベンガラ色のような赤い髪をした燕尾服でカッコつけた自己紹介をしている男の話を無遠慮にぶったぎる。
『は?我を召喚したのは貴様だろ?』
「いや、確かに召喚したのはオレだけど、オレが呼び出したかったのはイシュタム。自殺の守護女神だよ」
鳩が豆鉄砲を喰らったというのはこういう事かと思わせるくらい先程の低い声とうってかわりすっとんきょうな声を出す男に淡々と答える。
「オレはマヤ人の自殺の守護女神を呼び出し自殺を成功へと導いてもらおうと思ったのにマジで人違い、期待して損した。呼び出しといて悪いけど帰っていいよ」
興味をなくしさっさと踵をかえて帰ろうとするオレを『待て待て待て』と慌てて引き留める自称・悪魔。
「何?何か用?」
赤い月に赤い悪魔。赤ばかり見ていたら目がくらみそうだ。
『誰かの死ではなく、死を望んでいるのは貴様自身か?』
「そうだよ、オレは楽に死にたいんだ」
『死はあらゆる者から避けらぬもの。アスター・ウィーザートゥである我はこの世に産まれたすべての者だけでなく母親の胎内の赤子ですら狙えるぞ。』
「君の詳細は本で読んだよ。君のいうザラスシュトラとはゾロアスター教のこと。そしてかいつまんで言えば、君の宗教の善良な信仰者はいつも不慮の事故に注意し健康を損なわないように苦行をあまり尊ばない。君は投げ縄が得意ですべての人間の首に縄をかけ善人が死ねば縄は首から抜けるが悪人は縄に退かれて地獄に連れて行かれる。……って、オレは死にたいけど地獄に行きたいわけじゃない、てなわけでアンタはお呼びじゃない」
オレは死後のリア充を楽しみたいんだ。映画は見放題、食べたい物も並ばず無銭飲食し放題、しようと思わないが女風呂だって覗き放題!やりたい放題しまくりたいのだ。
地獄になんかいってたまるか!
これ以上の問答は不要だと歩を進めようとしたオレに『くっくっくっ』と不敵に笑う悪魔。
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