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『自ら死を望みながら地獄は嫌……か。ならば貴様の望み通り我が貴様を楽に死なせてやってもよいぞ』
楽に死なせてやる。その言葉につい勢いよく振り返ると腕を組み合わせ右手を口に添え口角を上げてわらっている悪魔と目があった。
「それマジで言ってる?アンタの見た目通りの真っ赤な嘘とかじゃないよね?」
『おや?嘘に色がついているのか?』
こちらがその気になったと解ったのか途端に悪魔は気をよくしコロコロと笑っている。
「……人を馬鹿にしたり傷つけるだけの悪意ある嘘を真っ赤な嘘、人のためについた善良な嘘を白い嘘っていうんだよ」
嘘の色なんてどうでもいい。真意が知りたいんだ。
すっかり暗くなった夜空に月と悪魔の髪と髪と同じ色の緋色の瞳が燦々と輝く。
『我は悪魔。由々しき死の悪魔。故に貴様を望み通り死なせてやってもよい。だが、ただ死なせるのでは些かつまらぬ!』
「……どっちだよ。」
悪魔が両手を広げた瞬間、突風が吹き上げ思わず両腕を顔の前で構える。
『死にたいのなら契約を結んでやる、我の手を取るがよい。』
突風の中、悪魔が手を差し出す。差し出された手を掴むより先に悪魔がオレの手を取り召喚する際にカッターナイフで切りつけた傷口を口に含み血をすすった。
燃えるような赤い色をしているわりにはおそろしく冷たく、いつもオレの自殺を邪魔する彼らと比べモノにならないくらいひんやりとした手と口内だった。
『貴様が生きたいと望んだ時、生き甲斐を見いだした時に貴様を死なせてやる!勿論、苦しまずにな。それまでは苦痛に耐え生きよ!!これは不躾に我を召喚した貴様との契約よ!既に契約は結ばれた!反古にはできぬぞ、苦しめ小僧!足掻いてもがいて生に苦しむがよい!!ハーッハッハッハー!!』
召喚した際とうってかわり雄叫びに近い笑いを上げて悪魔が夜空に消えた。
……最悪だ。勝手に契約を結ばれたのはまだいいが、条件が悪い。
死にたい人間に生き甲斐を見付けろとかマジ有り得ない、死ねない呪いを受けただけだろ、これ。
オレの後ろについて見張っていた彼は今は居ない。いつの間にか居なかった。きっと最初の突風で人避けでもされたか飛ばされたのだろう。
独り取り残されたオレは無駄に疲労もあり死ねますようにと祈りながらとりあえず海に飛び込んだ。
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