3.少しずつ

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 帰ってきて部屋の布団でゴロゴロしながら、今後どうするべきか考えてみたけどやっぱり聞かない訳にもいかなくて。 かと言って、聞く勇気なんてないし。 あの合宿から少しは成長したかなって思ったけど、全然だなって今更ながら思う。 夏休みも残りわずか、何かしらの収穫を得られると思ったけど早々上手く行く訳もなく。 「もう1回、蒼空に頼ろうかな?」  なんて思ったら、ネックレスが急に冷たくなったのでびっくりした。 このネックレスって、どうやら蒼空の思いと同調してるのかな? そんな事を考えていると、「晩ご飯出来たよー!」ってお姉ちゃんが呼びに来てくれた。 「結衣、いつまで制服でいるの! スカートがシワになるから着替えなさい!」 「はぁい」  私はクローゼットからジャージを取り出し、着替えてからリビングに向かった。 ちなみに制服はちゃんと、ハンガーにかけてますからね! 布団に放り投げてなんてないんですからね! というか誰に私は言ってるんだか!  リビングに向かうとカレーの良い匂いがした。 今日は夏野菜のカレーかな? 「お姉ちゃん、今日は夏野菜のカレーなの?」 「うん、野菜を八百屋さんからサービスして貰っちゃったからね」 「ふ〜ん」  私はお皿にご飯を装ってカレーをかける。 夏野菜がたっぷり入っていて、どちらかと言えばお肉が少ないかも? あ、でも若干ナスの方が多い様な気もする。 「ねぇ結衣ってば最近、良く喋るね?」 「えっ? そうかな?」 「うん、だって前は全然喋らなかったし」 「あ〜多分、それは蒼空(あいつ)のお陰かも!」 「えっ! あいつって誰!?」 「えっそれはほらね!」 「あ〜! はぐらかした! お姉ちゃんに教えなさい!」 「いやだー!」  どうやらお姉ちゃんは、私に彼氏が出来たのだと思ってるみたいだけど。 別に彼氏とかじゃ……って、何かネックレスが暖かくなってる様な気が。 「それにそのネックレス! 最近肌身離さず付けてるけど、もしかしてー!」 「えっいやこれは御守りって渡されて」 「ほらやっぱりー! 誰なの!?」 「えっとーあっカレー冷めちゃうから食べよ」 「またはぐらかす! 同じクラスの子? 私の知ってる子?」  さすがに執拗いなって思ったけど、久々にこんなにお姉ちゃんと話せるのはちょっと嬉しいかも。 退院してからちょっと素っ気ない態度ばっかり取ってたし。 こんな他愛のない日々が続いてくれたら幸せなのになって、その時は思った。 久々にこんなに笑ったかも。
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