5.さよなら

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 夏休みの最終日、私はいつもの様に神社を訪れていた。 「結衣、もうここへは来るな!」 「えっ何で!」 「暫く俺はここを留守にする、だから結衣が来ても俺はいない」 「どうしてよ!」 「それは言えない!」  珍しく全然何も教えてくれない蒼空。 ただ一つだけ教えてくれたのは、「最後の鍵を探せ」だった。 それだけじゃ分からないよ! そんな事を思いながら、ちょっと不貞腐れていた。 「そしたら、今日の夜まで居ても良いよね!」 「別に構わんが」  何となくだけど、ネックレスが冷たく寂しいと言ってるような気がした。 だけど、これ以上言っても教えてくれないだろうし聞いてもくれないと思った。 私達はいつもの様に、縁側で日が落ちるまで寝っ転がって空を見上げていた。 「なぁ結衣、良いもの見せてやるよ」 「なに? 良いものって」 「まぁ着いてこい」  そう言うと、蒼空は私の手を取り高く飛び上がった。 突然高く飛び上がるもんだから、スカートが大変な事になった。 私は慌ててスカートを右手で直した。 そして、私達は本殿の屋根の上に座り込んだ。 「取り敢えず、寝っ転がって空を見上げてごらん」  そう言われ空を見上げるとそこには満天の星空が広がっていた。 まるで自分が宇宙にでもいるかのような錯覚をする程に、とても綺麗な満天の星空だった。 「綺麗な空」 「左手を出してくれ」 「なに?」  蒼空が左手首に付けてくれたのは、満天の星空の中に桜の花びらがあしらった綺麗なブレスレットだった。 とても綺麗で何だか涙が流れてきた。 「なに泣いてんだよ!」 「泣いてないもん!汗だもん!」  何故だか涙が止まらなかった、そんな私を蒼空は小さな身体で抱きしめてくれた。 抱きしめられた途端、涙が更に溢れ出した。 「全くしょうがない結衣(やつ)だな」 「う〜」  暫く泣いて収まると、蒼空はいつもは見せない笑顔を私に見せてくれた。 それは、涙目になって桜色の瞳が輝いて見えた笑顔だった。 「さてそろそろ、さよならだ」 「……うん」 「安心しろ、また逢える」 「……うん」 「それじゃあ、またな」  そう言うと蒼空は、まるで桜の花びら舞うかのように消えていった。 蒼空が消えた瞬間、何処からか風鈴の音がなり私は気がつくと大きな赤い鳥居の前に立っていた。
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