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治まるどころか、声を立てて笑いだした沖田を困り果てて眺めていると、視線を感じた。振り返ると、目が合った土方がふいと顔を背ける。その肩が震え、口元に拳を当て咳払いで誤魔化される。
「笑っ……い、今、人の顔見て笑いましたね!?」
「笑ってない」
既に冷ややかな真顔に戻っている。
「絶対笑いました!」
つんとそっぽを向いてしまった土方に唇を尖らせる。
初対面から感じていた威圧感がない。不思議だ。それともあの威圧感は、先入観から来る気のせいだったのだろうか。
「やっぱり奇妙なお人だなぁ、あなたは」
まだ笑いを堪えながら、沖田は目尻の涙を指で拭った。
「奇妙って、」
「面白いお人ですよ、本当に」
眉を下げて笑う顔が、夕陽の逆光に照らされ妙に幻想的で、琴子は思わず言葉を飲み込んだ。
とろりとした蜂蜜のような光に輪郭を溶かされながら、沖田は瞳を細める。柔らかに微笑み、琴子を見つめた。
差し出された手のひらの意味を測れずにいると、くすりと笑い声を漏らし、金の瞳に誘惑するような光をたたえながら囁いた。
「……琴子さん」
こういうのは物凄く不得手だ。恋愛だなんだとなると、照れ臭くて体が痒くなるレベルに。
しかし絵画から飛び出たような美人を前に、雰囲気をぶち壊すようなジョークのひとつも出てこない。
「お、沖田さん……?」
沖田はこくりと頷く。金に透ける髪が、さらりと微風に揺らめく。桜色の唇が、そっと言葉を紡いだ。
「────僕の犬になりませんか?」
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