第1話

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 素直に返事をして、すぐ行動できる如月に、いい後輩を持ったよなあとしみじみ思う。  専門卒の俺と違って、大卒の如月とは、年齢的には3歳しか違わないんだけど、こんなにも後輩という存在が可愛いとは思ってなかった。  素直な性格と、人懐っこさ。それから俺より10センチは高いであろう身長と、ふわふわな髪。顔のパーツ一つ一つが整っていて、頭も小さくて手足も長いし、モデルみたいだなあと初めて見た時は驚いた。  ……だからまあ、何人かの新婦様に色目を使われているのを見た事もあって、如月は何も悪くないのにヒヤヒヤしたものだ。  でもにこにこするなとは言えないし、如月もそれに気付いていて、相手が怒らないように躱すのが得意みたいなので大事になったことは無いけど。 「うう、それにしても緊張するなあ」 「明日初めての同行だもんな」 「はい…俺が変なことしそうになったら殴ってくださいね、佐伯さん」  小さく呟かれた言葉を拾って、バシッと弱気な背中を叩いた。いて!と俺を見るその瞳を見つめながら、大丈夫だって!と笑ってみせる。 「お前ならへーき。俺が保証する」  だから心配すんな、と続ければ、佐伯さん…!とがばりと抱きつかれた。  ちょっと驚きはしたけど、はいはいとさらっと受け入れたこの時の俺は、知る由もなかった。  いくらスキンシップの激しい如月でも、ハグなんて簡単にしないことを。
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