死刑執行、猶予しますか?

1/8
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「……囚人番号2991号。出房だ、出ろ!」 きっかり、朝の10時だった。 オレの独房前に3人の看守が立ち止まった。 ……この時間の単独出房! それが何を意味しているのか、分からない訳はねぇ……! そう、『来るべき日がついに来た』ってヤツだ! この拘置所へ移送されてからの1年間、そうやって2度と独房に帰って来れなかった連中を何度も見て来た。 他人が死刑台に昇るのは知ったこったゃないが、今日はオレだなんて‥‥。 「ぐっ……! よ、寄るなぁ! 房に近寄るんじゃぁねぇ!」 オレは冷たい独房の壁に背中を押し付けて、看守を指さした。 「……出ろ、と言っている。素直に出てこい。面倒をかけさせるな!」 明らかにイヤそうな顔で、看守の一人が怒鳴りつける。 くそが……そんなに『イヤ』なら、来るんじゃぁねぇよ! だが、看守達はオレの思いと裏腹に鍵を開け、独房に雪崩込んで来た。 あれほど迄に『開いて欲しい』と願った鍵が、こんなにも『開いて欲しくない』と思った事はない。 「この野郎ぉぉ! 離せ、離せぇぇ!」 オレは全力で抵抗を試みるが、看守側は3人体制だ。更に背中側で手錠をかけられ、抵抗力を奪われてしまった。 そしてそのまま、オレは文字とおり引きづられながら独房を後にした。 くそっ! 冗談じゃねぇ! このまま死刑台になんて、絶対に登るもんか!
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!