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「……囚人番号2991号。出房だ、出ろ!」
きっかり、朝の10時だった。
オレの独房前に3人の看守が立ち止まった。
……この時間の単独出房!
それが何を意味しているのか、分からない訳はねぇ……!
そう、『来るべき日がついに来た』ってヤツだ!
この拘置所へ移送されてからの1年間、そうやって2度と独房に帰って来れなかった連中を何度も見て来た。
他人が死刑台に昇るのは知ったこったゃないが、今日はオレだなんて‥‥。
「ぐっ……! よ、寄るなぁ! 房に近寄るんじゃぁねぇ!」
オレは冷たい独房の壁に背中を押し付けて、看守を指さした。
「……出ろ、と言っている。素直に出てこい。面倒をかけさせるな!」
明らかにイヤそうな顔で、看守の一人が怒鳴りつける。
くそが……そんなに『イヤ』なら、来るんじゃぁねぇよ!
だが、看守達はオレの思いと裏腹に鍵を開け、独房に雪崩込んで来た。
あれほど迄に『開いて欲しい』と願った鍵が、こんなにも『開いて欲しくない』と思った事はない。
「この野郎ぉぉ! 離せ、離せぇぇ!」
オレは全力で抵抗を試みるが、看守側は3人体制だ。更に背中側で手錠をかけられ、抵抗力を奪われてしまった。
そしてそのまま、オレは文字とおり引きづられながら独房を後にした。
くそっ! 冗談じゃねぇ! このまま死刑台になんて、絶対に登るもんか!
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