【第1話:どうしてこうなった?】

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【第1話:どうしてこうなった?】

 どうしてこんな事になっているのかな??  遊園地の着ぐるみアルバイトに精を出し、オリジナルの着ぐるみ作成のためにお金を貯めては通帳を見てニタニタする。  そんな平凡(?)な日々を送っていただけなのに……。 『お前は!? まさか……奴の加護を受けた者なのか!?』  目の前には身の丈2mを超える大男。  しかし、ただの大きな男と言うわけではなかった。  赤い顔に30cmはありそうな長い鼻。  背中には大きな羽があり、高い下駄によってその巨躯をさらに大きく見せていた。 「ど、どこからどう見ても天狗さまですよね~……」  特撮か何かでは無いのかと都合の良い理由を見つけようとするが、当然そんなものは見つかるわけもなく。 『兎に角ここで会ったが100年目! 積年の怨み! 今晴らさんぞ!!』  ~時は数日遡る~ 「ちょっと姫衣菜(きいな)~! もう先に行っちゃうよ~!」  私の名前は西音寺(さいおんじ) 姫衣菜(きいな)。  花も羨む18歳のぴちぴちの大学生!  ……って、こう言う表現が友達からも古臭いとか言われるのかな?  長い黒髪を後ろで一つに纏めた小柄な私は、未だによく中学生と間違われるけど、自分ではそこそこイケてる美少女だと思ってる。あくまで自称だけど。  そして、さっきの声は同じ大学に通う岡本静奈(せいな)ちゃん。  寮も同じで部屋もお向かいさんで、高校からの大親友♪  ショートカットでモデルさんみたい。私が男の子なら絶対惚れてまう。 「静奈ちゃん、ちょっとまだ準備出来てないから、先に行ってて~!」  でも、今日はちょっと大学の授業はおさぼりさんするので、そう返事を返します。 「姫衣菜(きいな)! あなたまた授業サボってバイト行こうとしてるでしょ!? また補修受けることになっても知らないからね!」  でも、静奈ちゃんにはしっかり行動パターンを読まれていたようです……。  中々やりおるな……。  私は観念して部屋の扉をそっと開けると、お怒りの様子の静奈さまに祈りを捧げるのです。 「神さま、静奈さま、仏様。どうか今回最後だからお見逃しを~」  普段は私だって授業を入れている日はバイトを入れたりなんかしないんだけど、昨日の晩、担当の職員の永田さんからSNSでお願いされたのです。  決して特別手当に目が眩んだわけではないのです。 「またそんな事して~……また特別手当出すとか永田さんに言われたんでしょ~?」 「おぉぉ!? なぜそれを!? 静奈ちゃんてばやっぱり神さまでしたか!?」  私のその言葉に振り下ろされるげんこつ。 「痛った~い!? DV反対!!」  ふざけるのも程々にしておかないと、静奈ちゃんが本気で怒りそうだ。 「もうシフト入っちゃったんなら仕方ないから今回だけは後で授業の内容教えてあげる。今晩、部屋でお勉強だからね!」 「ありがと~私、静奈ちゃん抜きでは生きていけない!」  そう言ってハグしようとしたのだけれど、躱されてしまった……なぜじゃ!?  私が心の中で青春の叫びをしていると、静奈ちゃんは、 「今晩、部屋に居なかったら絶交だから!!」  と言って、さっさと大学に行ってしまった。  ~  私は静奈ちゃんと別れたあと、遊園地のバイトに向かうために電車に乗っていた。  いつもは3本以上は遅い電車に乗っていくのだけど、さっき静奈ちゃんに起こされたので、やる事ないし早めに出たのです。 「あ。この時間だと乗り換えで待たなくていいんだ」  ただでさえ早い電車に乗っていたのに、いつもは乗り換えで20分待つところ、待ち時間なしで乗れちゃった。 「これ、だいぶん早く着くなぁ~。門開いてるかな?」  私がアルバイトしているのは護摩富山(ごまとみやま)の上にある山の上の遊園地。  名前は『護摩富(ごまとみ)山上遊園地(さんじょうゆうえんち)』。  うん。そのまんまだね。  そこで着ぐるみを着て、お客さまを楽しませるのが私のお仕事。  子供の頃からぬいぐるみ集めが私の趣味であり、生き甲斐なのです。  そして夢はオリジナルの着ぐるみを作ること!!  だからこのバイトの求人を見つけた時には速攻で飛びついちゃった♪  もちろん静奈ちゃんも誘ってね。  だって、大好きなぬいぐるみになれるんだよ!?  それでお金まで貰えちゃうんだよ!?  静奈ちゃんが着ぐるみなんて!? もうはぁはぁだよ!?  取り乱しました……それでここのバイトを選んだんだけど、もし門が開いてなかったら、周りに時間を潰すようなお店も無いので心配です。  いつもは静奈ちゃんもバイト先が一緒だから、二人で話をすればいくらでも時間は潰せるんだけどな。  あっ、ちなみに静奈ちゃんは、ここのアトラクションスタッフのバイトの方です。  着ぐるみバイトは必死に誘ったけど断固拒否されちゃいました。なぜじゃ……。  しばらくして遊園地の開演2時間も前に着いてしまった私でしたが、門はいつも通り開いており、意外とすんなりと社員用の通用門から中に入る事が出来ました。 「心配して損しちゃった♪」  誰に語るわけでもなく独り言を零しながら歩いていると、ふと見慣れぬ道を発見します。 「あれ? こんな所に道あったかなぁ?」  いつもと違って時間はいっぱいあるし、バイトの控え室への近道かもしれないと理由をつけて、好奇心のままにその道に入っていったのでした。
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