【第3話:どうかその力で!】

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【第3話:どうかその力で!】

 お、おこん……ぷぷっ……こんさまの話を要約すると、 「要するに……この可憐でか弱い美少女大学生の姫衣菜(きいな)ちゃんに、妖怪退治をしろと?」  うん。無理だよね? 『うむ。色々省略しすぎで儂の話を聞いておったのか不安になるが、まぁその通りじゃ』 「謹んで辞退させて頂きます。それでは御機嫌よう」  私はそう言って踵を返すのですが、そのままぐる~っと一周させられて元に戻されてしまいます。 「妖怪とかわけわかんないですよぉ!! そんなの私に倒せる訳ないじゃないですか!?」  ほんとこのおこんは何を考えているんでしょうか!? ほんとこのおこんは!? 『おい。心の声が漏れているぞ……』 「あ。このおこんこんさまは何を考えていやがりますでしょうか」 『おい。今度は本音が漏れているぞ……』  まったく……うるさいおこんこんさまです。 『……もう何も言うまい。それより最後までちゃんと話を聞くのじゃ』 「はい。もう観念するのでよろしくです」  どちらかと言うと、観念したのはおこんこんさまのような気がしますが、私も観念したので触れないでおきます。 『まず、今この護摩富山には非常に厄介なことがおきておるのは先ほど話したな』 「え? あ……あ痛っ! はい! 言いました! 言ったような気がします!!」  なんてDV野郎でしょうか。  私が適当に答えていたら、空中に突然変な日本人形が現れて、バシバシ叩いてきやがりました。 『……厄介なことが起きておるのだ。そしてそれは、この護摩富山に封じられている【ある大妖怪】の封印が弛んでしまっておるのが原因なんじゃ』 「はい! おこん、こんさま、質問です!」  ちゃんと『おこんこんさま』って言っているのに、凄いジト目で見られました。  ナゼデスカネ?  そんな事よりちゃんと質問しておかないと……。 「わたしぃ~妖怪とかって言われてもぉ~ちょ~っと信じられないんですけどぉ?」 『お主の目の前にいて、今、現在進行形で話をしているのは誰だ?』  今私がお話をしているのは、見た目は子ぎつねそのものの『おこんこんさま』です。 「何か怪しげな術を使う事と、なぜかしっぽがいっぱいある事と、不思議なことに人の言葉を話す事を除けば……見た目は普通の子ぎつねちゃんですね」 『お主の思考回路はどうなっておる……儂は土地神であると同時に、3000年の長き時を生きる大妖……つまり妖怪じゃ。まぁ正確に言うなれば、今はこの地を治める最後の土地神なんじゃがな』 まさかこの子ぎつねが妖怪だったとは!? うん。そんな気はしてましたけど。 「おぉぉ……悪霊退散……南無阿弥陀仏……色即是空……唯我独尊!!」  私は左右の人差し指を十字にクロスして前に突き出し、消え去れと念じるのですが……、 「あっ……い、痛い……痛いです!? 結構ほんきで痛いです!?」  まったく……冗談の通じない妖怪です。 『儂は何だか頭が痛くなってきたわ……そもそも最後の唯我独尊って意味をわかっていっておるのか……』 「そんなの私が知るわけがないじゃ……あっ……だから痛いです!?」 『言ったのはお主じゃろう……と言うか話が進まん!!』  あ。本気で怒ってきた気がします。  ちょっとだけ反省して、真面目に話を聞くモードになっておきましょう。 「すみません! でも、こんなわけのわからない状況で、いきなり妖怪とか言われて普通に話聞ける人の方がどうかしてますよ?」 『うむ。まぁ混乱するのは仕方ないが……。良し。最初ぐらいちゃんと言葉でしっかり話しておこうと思ったのじゃが仕方ない。アレを使うとするか』  おこんこんさまがそう言って目をつぶると、周囲の空気が一変したのを感じます。  まるで周りの空気が水のように質量をもって、ぐっと重くなったような感じでしょうか。 『では、我の神通力を使うぞ……【かくかくしかじか】なのじゃ!』  おこんこんさまが、そう言った瞬間でした。  さっきまで重かった周りの空気が嘘のように何もなくなっていました。 「な、何かふざけた名前の妖術ですね……。それで何も起こってないようなんですけど、いったい何をぉぉぉぉぉぉ!!??」  私が名前がふざけていると抗議の声をあげようとした時でした。  頭の中に一気にいろいろな情報が流れ込んできたのです!!  この土地に封印されている【ある大妖怪】のこと。  昔、ここでその大妖怪が大暴れして、村がいくつも滅びかけたこと。  それを当時既にここの土地神さまの御使いとなっていた【天狐とまり】が、他の土地神様たちや良い心を持つ妖怪たちと一緒にこの護摩富山に封印したこと。  しかし、長い年月の末、今辛うじて残っている土地神さまが、封印の功績が認められて土地神さまに昇格した【天狐とまり】こと【おこんこんさま】しかいなくなってしまったこと。  などなど。  私が驚いている間にも、まるで初めから知っていたかのように、どんどん私の記憶に知識が流れ込んできます。  そして【おこんこんさま】は、元々の土地神さまの管轄を受け継いで、人形を祭る祠を住処としていることなどを瞬時に理解したのでした。 『どうじゃ? 驚いたか? これが土地神としての力の一端じゃ』  私は正直、ちょっとおこんこんさまを舐めてました。  こんな凄い力を持っているなんて!! 「おこんこんさまぁ!! どうかその力で今度の前期試験の……あっ……痛い……痛いですぅ!?」
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