【第4話:ギャップ萌え】

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【第4話:ギャップ萌え】

 私が宙に浮く日本人形に頭を十数回叩かれた後、おこんこんさまはようやく話を先に進めてくれました。 「それで、おこんこんさまが私に何か戦う力を貸してくれるという事なのです?」 『そうじゃ。儂は今はこの祠の土地神で、人形の神をしておる。そこに浮いている日本人形の おとめさん のように力と心を与えたり、自由に人形を操る事が出来るのじゃ』  そして私は宙に浮く日本人形のおとめさんと目があうのですが……おとめさん、なんだかとっても弱そうなのです……。  こんなので妖怪とか絶対倒せないと思うのですよ。 「おこんこんさま? 自分で人形操って倒したら良いんじゃないでしょうか~? あっ。決してこんな小さな人形で妖怪とか倒せるわけないじゃん! とか思ってないですよ? あっ……だから痛いです!?」 『まったくお主という奴は……まず第一に、儂は土地神じゃ。土地神は自らが治める土地以外に赴くことが出来ぬ』  話を聞いてみると、土地神様と言うのは治めている土地から一歩でも外に出てしまうと、神として一番大事な神格を失ってしまうそうで、代わりに一人の御使いを従えるのが一般的なのだそうだ。  何を以って一般的と言うのかは置いておいて。 「え? もしかして、私『神の御使い』とか言うのに選ばれちゃってます?」 『さっきから何度もそのように話しておろうが……』  何で普通の……ふ、普通ったら普通の! 女子大生である私が『神の御使い』に選ばれるのか意味がわかりません。 「えっと……なんで私なんです? 私はふつ~~の女子大生ですよ? もっと他の強そうな男の()とかにしたらどうですか?」 『普通のと言う所に非常に疑問を覚えるが、あと、強そうな男の()と言う所に何かの違和感を感じるが、とにかく誰でも神の御使いになれると言う訳ではないのじゃ』  なんでも話を聞いてみると、土地神さまの御使いになれるのは、何世代もそこの土地に根をおろして生活している者しかダメなのだそうです。  ちなみに妖怪や動物の場合は、単にその土地でずっと住んでいれば良いらしい。  じゃぁ妖怪や動物で良いのではと思ったのですが、近年土地が開拓されて、その資格を持つ妖怪や動物はいないのだとか。 「確かにうちの実家はここからすぐの所ですけど、私、今年の春から大学の寮に入ったから、今住んでいるとこ結構遠いですよ?」 『え?』 「え?」  本日何度目かの静寂の時……。  あれ? これはもしや断れるのでは? そう思ったのですが……。 『そ、そうなのだな。しかし、お主は資格を持っておる! と言うか儂が探した中では儂の御使いの資格をもっておるのは、お主しかおらなんだのじゃ!』  その資格って言うのをもう少し詳しく聞こうとした時でした。  遠くから、かすかに園内放送が聞こえてくるではないですか。 「あぁぁ!? もうこんな時間!?」  聞こえてきたのは、スタッフに向けた開園30分前を告げる園内放送でした。  あんなに早く着いたのに、いつの間にかもう着替えないと間に合わない時間になっています。 「おこんさま! ちょっとまた帰りに寄るので一旦解放してもらえませんか!? ち、遅刻しちゃいます!? うちのバイトって遅刻にだけはすっごく厳しいのですよ!?」  私が必死に頼んだからでしょうか?  少ししぶしぶといった感じでしたが、わかったと了承してくれました。  こんが一個足らん……とかぶつぶつ言ってましたが何のことですかね? 『そうだ。これを持っていくのだ。この護符は【人形使いの護符】。これを使えばその人形を用いて我の力の一端を使う事が出来るようになるはずじゃ。まだ、妖怪は()()()()沸いておらぬが念のために持っておくのじゃ』  駆け出そうとしていた私の元に、日本人形がふわふわ飛んできて、古びた一枚の護符を差し出してきました。  何かよくわかりませんが、これを貰えば解放してくれそうなので頂いておきましょう。 「それじゃぁ、おこんさま、またねぇ~!」  ~  何とかバイトに間に合った私は、その日も着ぐるみを着て、園内の子供たちの相手をしていました。  今日の着ぐるみは、私の一番のお気に入りでもあり、この護摩富(ごまとみ)山上遊園地(さんじょうゆうえんち)で一番人気の『ガオガオくん』です!  怪獣をモチーフにしたマスコットキャラ『ガオガオくん』は、赤いデフォルメした怪獣なのですが、背中のぎざぎざの突起がもふもふしてて可愛いのに、目は三白眼というギャップが萌えポイントなのです。 「でも、着ぐるみは愛でる事が出来ないのが悲しいのです……」  今は休憩時間になったので、控室に戻ってスポーツドリンクを飲みながら、悲しい着ぐるみの(さが)を嘆いていると、扉がノックされました。 「は~い。着替えてないから開けて大丈夫ですよ~?」  私がそうこたえると、扉が少しだけ開いて隙間から誰かが覗いてきます。  そして隙間から見える縦に並んだ二つの目。 「その覗き方怖いから!?」 「へへへ~♪ 姫衣菜ちゃん、見~っけ♪」  そう言って扉を開けて入ってきたのは、同じバイト仲間の(たちばな) 五月(さつき)ちゃんでした。  見た目は私とおんなじちみっ子なのに、顔が超美形な上、ソバージュがかった茶髪と相まって、凄い女子力を持っています。  静奈ちゃんと並ぶ、私が男だったら惚れてまぅ女子その2です。  ちなみに五月ちゃんは、遊園地の清掃スタッフのバイトをしている子なのですが、『ガオガオくん』の大ファンなので、きっと私を見かけてさぼり(遊び)に来たのでしょう。 「五月ちゃん、遊びに来るのは良いけど、また社員さんに怒られるよ?」  一応、私はそう言って注意してあげるのですが、 「だって~、ガオガオくん in 姫衣菜ちゃんバージョンが見えたら、覗きに来ないわけにはいかないじゃない?」  いけなくはないと思うのだけど、とりあえずそういう事にしておきます。  それより、私はどうしても誰かと話をしたかったので、これ幸いと五月ちゃんにさっきの出来事を話すのでした。 「五月ちゃん聞いて! 私ね……はじめて白昼夢ってのを見ちゃった! 起きてても夢って見るもんなんだね~」
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