ドレスと一緒に私も売れました

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はぁ……… 尋輝さんが大きなため息を吐いた。 「仕方ない。 じゃあ、最後の手段。 パーティが終わるまでに、 思い出せなかったら、何でも言う事を聞くん だったよね。」 あ…… 「俺と付き合って。 絶対に幸せにするから。 家や職業なんて関係ないだろ。 俺が紬を守るから。」 ここまで言われて、嬉しくないわけがない。 でも、私には自信がなくて… 私が俯くと、尋輝さんは私の手を取り、玄関傍にはめ込まれた鏡の前に連れて行った。 そこには、赤いドレスを身に纏い、赤い口紅を差した私がいた。 さっきは驚くほど綺麗だったはずなのに、何かが違う。 「紬、背筋を伸ばして、胸を張ってごらん。」 尋輝さんに言われて、背筋をピンと伸ばす。 すると、猫背で自信なさげだったさっきの私とは違う私が現れた。 「紬は自信を持っていい。 紬は世界一の女の子だよ。 俺なんかが足元にも及ばないくらい。 だから、お願い。 俺と付き合ってください。」 なぜだろう。 赤いドレスは、私に自信をくれる。 頑張ろうって勇気をくれる。 私は知らず識らずのうちに頷いていた。 「私でよければ… 」 喜んだ尋輝さんの笑顔は、とても眩しくて、きっと一生忘れないだろうと思った。 尋輝さんが、どんな風に私を思い、見守ってくれていたのか。 私がそれを知るのは、まだまだずっと先のお話。 ─── Fin. ───
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