プロローグ

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プロローグ

   「真奈香様ごきげんよう」 「ええ、ごきげんよう」    ワタクシは級友との挨拶を交わし廊下に出る。  ワタクシの周りを歩くのは女生徒ばかり、しかも育ちの良いお嬢様ばかりですわ、学園の造りも無駄に立派でお高そうな校舎、明治から続くとかいう話でしたわね。  ここに通うのは基本的には財界政界の子女、お嬢様が通う学園、俗に言うお嬢様学校ですわね。    ワタクシの名前は『久那伎真奈香(クナギマナカ)』この学園に通う二年生。  この学園に通ってるということは私もお嬢様ということですわね。  家は色々と手広く展開している久那伎グループという会社を経営している一族ですわ、久那伎といえば少しは有名なんですのよ。    さて、ワタクシの家柄なんてどうでもいいのでさっさと帰ってコーラ片手にクソゲーと洒落こみましょう、こないだ凄いクソゲーを見つけたんですのよ。    すでに周りに人影もほとんど無く、私もクソゲーと洒落こむために帰路に就こうとしたところ。  パンっと乾いた音と共に怒声が聞こえてきましたわ。   「一体どういうつもり!」 「……あ」    喧嘩? 元気な事ですわね、場所は隣の空き教室ですわ。  確か隣の教室はバルコニーの柵がグラついてて修理する予定で空き教室になってたはず。  何故そんなデンジャーゾーンで喧嘩するのか理解に苦しみますわね、しかし空き教室の鍵は閉まってるはずですのに、わざわざ鍵を開けてまで何がしたいのでしょう。  とりあえず何かあっては問題ですし、仕方ないので止めにいきますか、ワタクシはそう思い空き教室に向かいましたわ。    空き教室まで来てみると、どうやら喧嘩ではなくイジメというやつですわね、お嬢様学校でもあるのですのよねイジメ、あーやだやだ。    扉を気付かれないようにそーっと開けると、何故そーっと開けるかですって? いきなり開けて逃げられても困るじゃないですの、そういう事でそーっと開けましたわ。さて、そこには四人の生徒がおり一人の女生徒の前に主犯と思われる怒声を発したと思われる女生徒、取り巻きらしきモブ顔の二人が主犯少女の横に控えている状況、ネクタイの色からして一年生ですわね。    正面の頬を抑える少女の顔を見ると私はつい   「あら? 可愛らしい子ですわね、ワタクシの事お姉さまってよんでくれないかしら?」    とつぶやいてしまいましたわ。聞かれてませんわよね? と思い四人を確認する……大丈夫、気付かれてませんわ。  あのイジメを受けてる子、私と同じくらい艶やかな長い黒髪で顔も小さく整った顔をしていますわね。    最近流行ってるメンバーの多いアイドルグループS&W44なら余裕でセンターですわね    しかしあのグループの名前のS&W44って名前どうにかならないものかしら?  『硝煙の香るアイドル達』とかなんとかちょっとセンスの分からない売り文句の人気アイドルなのですのよ。  こないだの新曲の『恋するハードボイルド』という曲のプロモ映像に使ってる小道具なんてグループ名がアレのクセしてベレッタM1919なんですのよメーカーがあってないんですのよ!!  せめてM39とかにすべき……おっと話が脱線しましたわね失礼。   「武者小路先生に色目を使って、なんてはしたない!!」 「そんなつもりは……」    かー、聞いてれば実にくだらない内容ですこと、嫉妬って怖いですわー。しかも武者小路先生って確か今年で六十二歳じゃなかったかしら? あのこジジ専ですの?  さてアホな事を考えている間に徐々にバルコニーの柵の方に……あれ? それってヤバくありませんこと? ここ三階ですのよ、落ちたらただじゃすみませんのよ? 理解してるのかしら。   「あなたたち何をしてるんですの!」    ワタクシが前に進み声をかける。そこにいた全員が私の方を見ますわ。  そしてモブ子とモブ美が私の前に立ちはだかり、主犯娘が私の方を見て   「あら、先輩には関係の無いことですわ外野は黙っててくださる?」    わーお、ワタクシ相手になんて言い草。よほどお家が偉いと見えますわね、モブ二人に私の足止めをさせて  主犯娘はワタクシの方から標的の女生徒の方を向く、そしてワタクシがいるにも関わらず罵りながら相手の肩を押しましたわ。   「いい加減におやめなさい、そこの柵は危ないんですのよ」    私の言葉を無視する主犯娘たち。無視とは良い度胸ですわね全員ぶん殴って黙らせてやろうかしら? ワタクシ家が文武両道を信条にしているので格闘技もやってますのよ、健康と美容のためでもありますけど。    ヒートアップしている主犯娘はワタクシの言葉など聞こえないかのように更に女生徒を思いっきり強く押しましたわ。  そしてバランスを崩した女生徒が柵にぶつかると……    金属の折れる嫌な音がした……   「――ばか! だから言ったじゃないですの!!」    ワタクシはモブ二人を突き飛ばし走り出す。自分でも不思議なほどでしたわ、名前も知らない下級生のためにまさか自分がこんな事をするなんてと、だけど走り出したら止まらない。    たった数歩の距離がとても長く感じましたわ、イジメ三人組は状況を理解できてないのか固まっています。女生徒も何とか踏みとどまろうとしたが外に投げ出されてしまいましたわ。    ワタクシもトチ狂って投げ出された女生徒目掛けて三階から飛び出し空中で女生徒を抱きかかえましたわ、何十メートルと落下してるような感覚がし自分が下敷きになるように体制を変えました。  あー、ここの下って植木とかないんですのよねー、女生徒は怖さのあまりか目を硬く瞑り口をギュっと閉じていましたわね。   「「「キャー!!」」」    教室から三人の悲鳴が聞こえる、お前がやったんでしょうにと案外余裕で考えつつ落下するワタクシ。  抱えた女生徒に対して、この子とても柔らかいですわねと思った瞬間……   「――!」    強い衝撃がワタクシを襲いましたわ……そこでワタクシの意識は途切れましたわ。    ……  …………
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