第二十三話 ヴィレッジ・オブ・ザ・デッド セカンドシーズン

1/1
前へ
/114ページ
次へ

第二十三話 ヴィレッジ・オブ・ザ・デッド セカンドシーズン

 廊下に出ますとゾンビが二体こちらに向かってきますわ、すぐそこの部屋に行くだけでいきなり二体って結構な数が入り込んでるようですわね。  さて、ゾンビ相手に組技なんてしたくないのでワタクシは全力で顔面を殴り飛ばしますわ、二体目も同じようにぶっ飛ばします。 「はー、間近で見ると凄いですな」 「感心していただけるのは結構ですが急いで部屋に行きますわよ」  ゾンビ二体を速攻で倒しムーロさん達の部屋の方に目を向けるとドアの開いた部屋が目に入ってきました。 「すでに襲撃されてますしー!」 「あわわ……急ぎましょう」  ワタクシとムーロさんは急いで部屋に向かって走ります部屋の所に行きますと中から声が聞こえてきましたわ。 「く、アイツ等何処に隠した? それらしい物はないな」 「ゾンビどもが暴れてる間に仕事を済ませるぞ」 ワタクシは入り口に仁王立ちし侵入者を睨みつけて。 「残念ですわね、あなた方のお仕事はここで失敗ですわよ」  ワタクシの姿を確認した黒装束を着た男たちは舌打ちをします。 「全員外に行ったものだと思ったが残っていやがったか」 「く、守りに置いて置いたゾンビが一瞬でやられたか」 「ワタクシ相手にたった二体で止められると本気で思ってますの?」  ワタクシは部屋を見回すと黒装束の男が全部で三人いました。 男たちは懐からナイフを取り出します。しかもそのうちの一人、真ん中のリーダーっぽい男がカプセルのような物を幾つか取り出しました。 「また、ソースフェールですの? ソースフェールってそんなに簡単に手に入るものなんですの?」 「比較的楽に入手可能なマジックアイテムですが幾ら何でも多すぎますな」  男がソースフェールを地面に置くと中からゾンビが全部で五体登場してきましたわ。  ゾンビ襲撃の正体はこの男たちが持ち込んだソースフェールのようですわね。 「一体何個もってるんですのよ!」 「さあな、百は持っていたはずだが村での陽動のために殆ど使っちまったよ」 「最悪な連中ですわね、ワタクシ達の運んでる物が目的のようですがここまでするとはどういうことですの?」 「それが俺たちの仕事でな悪く思うなよ」  ワタクシ自分で温厚だとは思っていましたが流石に少し怒っておりますわよ。 「身勝手な方々ですわね、手加減はしますが八割ほど死ぬ覚悟をしておいてくださいましね」  ワタクシは構えてムーロさんに下がってるように言います。 「ムーロさん巻き込まれないように下がっていてくださいませ」 「は、はい」  ムーロさんは距離を取り隣の部屋のドアを盾にしてこちらを覗いております。 「マナカさん頑張ってくだされ!」 「ウヴォアアァァ!」  ムーロさんが逃げると同時にゾンビが変な呻き声をあげてワタクシに襲い掛かってきますわ。 「割と新鮮な死体のようですが少し臭いますわよ!」  正面からバカみたいにやってくるゾンビの頭に回し蹴りを決め速攻で一匹仕留めますわ。 「なんなんだあの女は! いくらゾンビとはいえ一発で頭を吹き飛ばすぞ!」  すかさず後ろにいたゾンビの頭を掴んで床に叩きつけますと他のゾンビを無視して男たちに向かいます、男たちもナイフを構え迎撃態勢を整えましたわ。  まずは右にいた男が少ない動作でナイフでワタクシに突きを放ってきました、ワタクシはそれを手甲で受け止めます。男はすかさずに後ろに少しステップしてワタクシの反撃を警戒しました、いい反応ですわね。 「反撃させてはくれませんのね」 「反撃? バカ言えお前の攻撃なんて食らったら俺もあのゾンビみたいになっちまうだろ」 「ダメもとで聞きますが貴方がたは一体何者ですの? 何故ワタクシ達の荷物を狙いますの?」 「悪いが言えないな」 「それはそうですわね」  右にいた男が再びワタクシに攻撃を仕掛けてきますが今度はそれに合わせて左の男が投げナイフを取り出し投擲してきます。  少し身体を捻って投げナイフを交わしたところに右の男がナイフを突き出してきます、ワタクシはその突き出した腕を取り脇に抱え込み捻り脇固めの要領で相手の腕をへし折ります。 「うぎゃ!」 「極めたら即折るのが基本ですわね」  骨の折れる嫌な音がすると男はその場にうずくまってしまったのでわき腹に蹴りを入れてとどめを刺しておきますわ、追い打ちは淑女の嗜みですわよ。  二人とゾンビでワタクシの相手をしてる間にも一人は盾を探しております、あからさまに怪しい宝箱が置いてあるのに何故それに気付かないのでしょう?  そういえば何故あの人たちはゾンビに襲われないのでしょう? おそらくはあの黒装束に秘密があるのでしょうけどね。   試しに左にいた男に向かっていきます、男はミドルキックでワタクシを迎えうちますがワタクシはその足を掴み足首を捻って引きずり倒しますと男の黒装束を引き破ってゾンビに向かって投げ飛ばします。  すると男とぶつかったゾンビは男に気付き首筋に噛みつきましたわ。 「うぎゃー!!」  血しぶきが周りを汚していきます、男は痙攣して白目をむき絶命しましたわ。  これ夢に出そうですわね……しかし、あの黒い装束が魔物から認識されなくなってるのは確かですわね。  男がゾンビ化しては困るので頭をストーン・バレットで潰しておきますわ。  この倒し方は残酷でしたわね……反省ですわ。  男の絶叫が部屋にこだまします。盾を探していた男も二人がすでにやられたことを察しワタクシの方を向きます。 「あの二人がこうもあっさり負けるとは、まるでアイツと同じじゃないか……」  アイツ? 男の呟きが気になりましたが今は目の前の事に集中します。 「仕方ないがやるしかないな」  男はまたもソースフェールを使用すると今度はゾンビではあるのですが背中から触手の生えたゾンビが3体出てきましたわ。 「こいつまで使うことになるとはな」  触手ゾンビがいきなり触手で槍のように突き刺してまいります、フラーゲトイフェの後にこの程度の魔物を出されても困りますわね。 「あの悪魔のあとですとこの程度の魔物じゃなんとも思いませんわね。――ストーン・ランチャー!」  触手を踏みつけて無防備なゾンビの顔にストーン・バレットより威力のあるストーン・ランチャーという魔法ををおみまいしますとあっさり触手ゾンビが一体崩れ落ちますわ。  残りのゾンビ達がワタクシに襲い掛かってきます、戦力は大したことないですがこの広さの部屋にゾンビがまだ五体もいると狭くて困りますわね。 「……こいつは任務失敗かもなぁ」 そう言うと男はワタクシがゾンビと戦っているのを確認し魔法詠唱を始めましたわ。 「――我は命ずる、火よ燃え上がれ我が眼前を焼き尽くせ! ファイアエクステント!」  コイツ、火の魔法を使うようですわね! あの異世界人を始末したのもコイツ等のようですわね!  ワタクシとゾンビの足元に火の線で円が描かれていきます! これはヤバイかもしれませんわね! ワタクシは咄嗟にゾンビを一体地面に叩きつけ後ろに飛びのこうとしましたが完全には間に合いませんでしたわ。 「きゃ! ――くー!」  地面に叩きつけたゾンビが蓋になり直撃は避ける事が出来ましたわ。しかし、そこそこのダメージを受けてしまいましたわね。  ですが今の魔法に巻き込まれたゾンビは炎上して倒れていきますわ、ゾンビが全滅したのを確認してワタクシはすぐに体勢を立て直し最後の男の方に向き直ります。 「ゾンビで蓋をしただと!」 「一か八かでしたが成功でしたわね、ですが流石に無傷では済みませんでしたわね、火傷跡が残ったらどうしてくれますの」 「火傷の心配なんてしないで済むようにしてやるよ!」  そう言って男はナイフで切りかかってきましたさっきまでの二人よりも早く隙が少ない斬撃、魔法も使えてかなりの使い手ですわね。  敵の初撃を首を少し動かし避けましたが頬を少しかすめます。 「――ッチ!」  ワタクシは怯むことなく男の足にローキックを合わせます、敵も少し足を引きワタクシのローキックを避けます。 「女、本当にお前は何なんだ?」 「只のの八等級冒険者ですわ!」 「ふざけたことを!」  実際ワタクシって何者でしょう? とか考えてますと男の蹴りが飛んできましたわ、これをワタクシは膝と肘で挟むように叩きつけ受け止めます。 「ぐあ!」  ミシっという良い感じの音がしましたわ、男の足の骨にヒビでも入ったようですわね。  これはチャンスですわ! と思った瞬間ガクっと膝をつきそうになりましたわ。 「クク、あのかすり傷だと効果は薄いようだが効いてきたか」 「やってくれますわね……毒ですわね」 「普通なら丸一日は起きれない眠り薬だ」  ワタクシは回らなくなってきた頭を左右に振り眠らないように意識を保ち敵を見据えます。これはそう長くは持ちませんわよ。  ふと下を見るとさきほどの男のうちの一人が投げた小型の投げナイフが目に入ったのでそれを素早く拾います。 「その投げナイフでどうするつもりだ?」 「こう……するの、ですわ!」  ワタクシはナイフで自分の左足の太ももを刺します。 「――っつー!! ですが目が覚めましたわ!」 「バカな!」  男が驚いているところ、痛みをこらえつつ距離を詰めますわ。  男も先ほどの足が痛むのか反応が遅れたようですわね。 「しまった!!」 「これで決めますわよ!」  男にワタクシは力いっぱい右のボディブローを決めます、男は呻いて前かがみになったのですかさず左のショートアッパー、足の踏ん張りがきかないので少し威力は落ちておりますが男が少し浮きましたわ!  トドメと思い男の横っ面にショートアッパーの勢いのまま回転しての右のバックブローを叩きこみます、右手の甲に男の骨にヒビが入った感触が確かにありましたわ。  「――ぶげら!」  男は吹き飛び壁に叩きつけられました。  男が動かなくなるのを確認すると再び眠気が襲ってきましたわ……  ムーロさんが慌ててこちらに走ってくるのを見た時ワタクシは意識を手放しました……
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

197人が本棚に入れています
本棚に追加