第二十五話 真実は闇の中-心という名の闇の中-

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第二十五話 真実は闇の中-心という名の闇の中-

 ワタクシが目を覚ますとマウナさんの心配そうな顔が目の前にありました。 「マナカさん大丈夫ですか?」  ワタクシは軽く頭を振りつつさっと自身の状態を確認します。 「ええ、問題ありませんわ」 「よかった……」  マウナさんが安堵の表情を浮かべますわ、そしてワタクシの頭に触れている高級シルクのようなこの感触、最初のマウナさんの顔の位置から推測するにこれは膝枕ではないでしょうか?  ワタクシは急いで顔を反対に向けて深呼吸をしますとマウナさんがくすぐったそうにしております。 「ちょ……ちょっと! マナカさん何やって……くすぐったいですって」  悶えたマウナさんが立ち上がるとワタクシ顔面を床にぶつけましたわ。 「もう!」 「いだい……ですわ」 「自業自得です!」  実際身体の方は大丈夫なのでマウナさんの肌の感触を思い出しつつ、ワタクシは立ち上がります。 「じ、実際の所ほ、本当に大丈夫ですか? い、一応解毒の魔法も使って治療はしてますが」 「先ほど言いましたが問題はありませんわ、皆さまご心配おかけしましたわね」  ワタクシはアルティアさんやマウナさんにベティさん達を見てお礼を述べます。 「まったく、マナカちゃん見つけたときはビックリしたわよん、ボロボロで倒れてるし部屋がボヤ騒ぎでムーロさんが消火活動してるしねぇ」 「流石のワタクシでも毒は厳しかったのですわー」 「マナカさんが倒した暗殺者っぽい男で生き残っているのは縄で縛って転がしておきましたぞ」 「ありがとうございますわ、男が目を覚ましたら黒幕の事でも問いただしましょう、そうだバッソさんは何処ですの?」 「バッソなら村の方に向かいましたぞ特に被害の大きかった場所の片付けを手伝いに行きましたな、しばらくは戻ってこんでしょう」  それはある意味で都合がいいですわね。  騒がしかったのが嘘のように静かになっておりますし皆さまがここにいるという事はどうやらゾンビは全部退治できたようですわね。 「外が静かになってますわね、ゾンビはどうなりましたの?」 「大した被害も無く殲滅完了しましたよ」 「それは良かったですわ、ぶっちゃけ原因ワタクシ達ですし……」 「破損した建物は私がプラム商会として援助金を出しておきす」 「それが良いと思いますわよ」  ムーロさんはある意味踏んだり蹴ったりですわね。 「う、うーん」  黒装束の男が目を覚ましまたようですわね、ワタクシ達は男を囲むように並びます。 「おはようございます、気分はいかがしら?」  ワタクシが男に声をかけると男は渋い顔をしますわ。当然ですわねこれからの事を考えると渋い顔にもなりますわね。 「俺をどうするつもりだ?」 「色々と聞きたいことがありましてね、素直に答えてくだされば見逃してもよろしくってよ」 「悪いが口は堅い方でね」 「拷問とか趣味じゃないんですのよねぇ……」  言うまでもなくワタクシに拷問経験なんてありませんわよ、知識としてはございますが普通のJKでしたから拷問とか縁がございませんのよ。  ですが、こういったハッタリも必要なのですわよ。  ワタクシが男に向かってハッタリをかますとマウナさんが男に質問しますわ。 「あなた方の目的は私たちが運んでる荷物、盾が目的ですか?」 「……」  だんまりですわね、まあ当然ですわね。あの時の異世界人のように秘密がバレそうになると消しに来るような集団ですし。  そう考えておりますとマウナさんがゲートボールスティックで男の足の指を力いっぱい叩きましたわ。 「ぐあ!」  男は呻きます。突然のマウナさんの行動に皆がぎょっとしてマウナさんを止めます。 「ちょ、ちょっとマウナちゃん行き成り何してるのよ」 「そうですわよ、行き成りびっくりですわ」  マウナさんは不思議そうに私たちを見ると 「情報を聞き出そうとしたんですけどダメでした?」 「ダメではないのですがまずは穏便にいきませんこと?」 「マナカさんがそういうなら……」  流石は魔王ですわね、ワタクシ達と感覚が少しずれてるようですわ。  行き成り拷問開始とはワタクシもびっくりですわ。 「マナカちゃんもだけどマウナちゃんも割とズレてるわよね」 「ワタクシはズレてなんていませんわよ失礼な、ベティさんには言われたくありません」  ワタクシがズレてるとか何言ってるんですのこのオカマは? 昔は岡田以蔵ゴッコとかしましたがワタクシはいたって普通ですわよ。  どんな遊びかですって? 土佐弁で話しかけて辻斬りする遊びですわ……今考えるとはた迷惑極まりない遊びですわね。 「アルティアさん治療をお願いしますわ」 「わ、わかりました」  ワタクシは男に向かって平静を装って話しかけます 「素直に喋ってくださりません? そうでないと先程のようにうちの狂犬が黙っておりませんわよ」 「悪いな俺たちもプロなんでな、情報を漏らすわけにはいかねぇんだわ」 「では、これからどうなさいますの? 素直に喋っていただければ解放しますのよ」  ワタクシは男に喋るように促します。 「お前達はあの異世界人の末路を見ただろ」 「それって喋れば消されるということよねぇ」 「まったく野蛮な話ですこと」  男は自嘲気味に笑っております。  しかしこうなると喋らせるのは難しいですわね。 「拷問って私の趣味じゃないわねぇ」 「ワタクシも趣味じゃありませんわよ」 「私がやりましょうか?」  マウナさんが拷問を買って出ますがそんな事は極力させたくありませんわね。そう考えていると。 「なーに、お前たちは拷問とか考えなくていいぜ」 「どういうことですの?」 「こうするからさ!」  男はワタクシの言葉に応えると奥歯を噛みしめるような動作を取りましたわ。 「な? アルティアさん! 治療を」 「奥歯に毒を仕込んでいたのね?」  慌ててアルティアさんが男のそばに行くと首を振りました。  男は苦しんだ様子もなく口の端から血をたらし息絶えましたわ。 「す、すでにこと切れています」 「徹底してますわね……ムーロさんここまでする方々に心当たりはありませんの?」  ムーロさんは考えてから口を開きました。 「流石に心当たりはないですな、やり口からしてかなり大きな組織だとは思うのですが」 「結局何もわからずじまいでしたね」 「仕方ありませんわ、奥歯に毒を仕込んでいたなんて。徹底してるにもほどがありますもの」  しかしこれでこの依頼の山場は超えたと思ってよいでしょう。 「はぁ、しかしこれでゆっくりと休めますわね……ワタクシもうクタクタですわよ」 「わ、わたしも久しぶりに戦ったから、つ、疲れました」 「この男の死体はどうします?」 「あー、そうですわよね。死体と一緒に眠るとか嫌ですわね、外で火葬してあげましょう」  ワタクシ達は最後の力を振り絞って周りを片付けて回りましたわ、片付け終わるころにはすでに深夜になっておりました。  バッソさんも村の手伝いを終えて戻ってきました、部屋の惨状を見て違う部屋を用意してくれたのでワタクシ達はシャワーを浴びなおし再び眠ることにしました。  ――  ――――  翌朝、というにはすでに昼近くですわね、流石に昨日は疲れすぎて朝起きれなかったという事ですわね。  宿の部屋から外を見ると思ったより建物等に被害はありませんでした、ひょっとするとワタクシがバトった宿屋の部屋が一番酷いかもしれませんわね、後はマウナさんがフィーバーした村南の入り口付近でしょうか。  さて、窓から見える街の被害状況の確認は終わりですわ、そしてお腹が空いたのでワタクシとマウナさんにアルティアさんの三人で食事に行こうと部屋を出るとベティさんとムーロさんも丁度部屋からでてきました。 「ふわーぁ、アラ皆おはよう。もう昼近いけどねぇ」 「おお、御三方、おはようございます」 「お、おはようございます」 「おはようございます」 「ええ、ごきげんよう」  ワタクシ達は全員で宿屋の食堂へと向かいました、すると宿にバッソさんと村人数名が集まって何か話しておりました。  ワタクシ達の姿を確認したバッソさんが話しかけてきました。 「やあ、おはよう。昨日は本当に世話になった」  バッソさんに続いて年配の男性が話しかけてきます。 「昨日は村を助けていただき感謝いたします。私はこの村の村長をやっております」  村長だと話した男性がワタクシ達にお礼を述べてきますが理由が理由なだけにワタクシ達は全員村長から目をそらしましたわ。 「いえ、当然の事をしたまでですわ」  ワタクシがそう言うと全員で首を高速で上下に振ります。  そして目をそらしたワタクシ達に気付かず村長が 「いやいや、何かお礼をせねばと話し合っていたところです」 「いえ、昨日もそこの男性の方がそうおっしゃってくださいましたが、先ほどもマナカさんが言ったように私たちは当然の事をしただけなのでお気になさらず」  どうやら昨日同じことをおっしゃった方が一緒にいたらしくマウナさんが断りますと、村長もバッソさん達もそういうわけにはいかないと言うような顔をしております。  ワタクシはチャンスとばかりに村長に話しかけますわ。 「そうですわね、それではこういう事でどうでしょうか」 「どういうことですか?」 「ここには腕の良い大工が多いと聞きましたわ」 「ええ、まあ。大工は多いです」  マナカさんはワタクシを見て何がしたいか納得したようですわ、正直マッチポンプのような気がして気が引けますが双方納得できれば良いのですわ。 「少し先の話になるのですが、ワタクシ達腕の良い大工が必要になるのでその時に力を貸していただきたいのですわ、それがワタクシ達へのお礼という事でよろしいかしら?」 「そんなことでよいのですか?」 「ええ、その時になったらまたこの村に来させていただきます」 「わかりました、そんな事ならお安い御用です。その時になったら特に腕の良い者を派遣させていただきます」 「ええ、えぇ。ありがとうございますわ」  これで国の再建の時の大工は確保できましたわね。  ムーロさんやベティさんにアルティアさんは何のこっちゃ? という顔をしておりましたがそこは無視しますわ。    あの後、村の人々と少しばかり会話をしながら食事を取りましたわ。  そしてワタクシ達は食事をした後目的地へ向かうための準備をし村を出発することにしました。  ワタクシ達の出発に村人たちが見送りに来てくれましたが実情を知るものとしては何とも言えない出発となってしまいましたわ……
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