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第二十六話 盾運び護衛任務完了!
「……なかなかキツイ旅立ちですわねコレ」
「し、仕方ないと思いますよ」
ワタクシ達は馬車に揺られつつ道を進みます、ここからの道はまたある程度舗装されているので馬車の揺れは比較的に少ないですわね。
「そうねぇ、確信はあっても真実は闇の中ですもの、うかつな事は言わない方がいいわよねぇ」
「そうですな、プラム商会の方で建物の修繕費等はあの村に届くようにしておきましたのでそれで許してもらいましょう、幸い人的被害はゼロでしたし」
「いつの間にそんな手続きしたんですか?」
「伝書鳩ではなく伝書ミニワイバーンというヤツを使って連絡をしておきましたよ、鳩より賢く早いし成長しても大きさはそれこそ鳩サイズなので助かっております」
そうでしたわ、この世界には電話のような通信手段はなく連絡のやり取りは手紙が主流でしたわね。
魔法でなんとかならないのでしょうか? また今度聞いてみましょう。
――
――――
ワタクシの予想通り村を出てからは平和そのものでしたわ。
「マ、マナカさんの言った通りですね。さ、昨晩の襲撃が本当に最後だったみたいですね」
「前にも言ったと思うけど、ここからペンノまでは一日程度で着く距離だし、見晴らしも良いから襲撃には向かないのよねぇ」
「ここを見て思いますにここで襲撃をかけるならよほど大きな部隊で襲撃する必要がありますわね。この国の組織ならそれも可能でしょうが、それでも難しいでしょうね」
「そうですな、敵がこの盾にどれほどの価値を見出してるか分かりませんが軍隊を動かすにはかなりの資金が必要でしょうし、ペンノは街の大きさは中規模ですが場所が場所のため守りは堅い方ですからな」
ただここは異世界ですからどんなトンデモな方法で仕掛けてくるかは分かりません、注意するに越したことはありませんわね。
「そうは言いましたが襲撃する方法は色々ありますから注意するに越したことはありませんわね」
「集団転移とかしてくる可能性もありますものね」
集団転移……なんですのその不穏なワードは?
「そんなのありますの?」
ワタクシは聞きなおします。
「はい、相当な規模の魔法陣や魔力を使いますが百人単位でも移動させることができる転移魔法陣もありますよ」
マウナさんが末恐ろしい事を言っておりますわ、流石異世界……
「はっはっは、出来るというだけですよ、費用や維持の事を考えると割に合いませんからな、百移動させる費用で五千の軍が動かせてしまいます」
「そうですね、それに結局送る先にも魔法陣が必要ですから軍事利用は難しい所です」
「そこまで万能では無いのですね」
「ええ、出来ても人を数人送るくらいです」
「ホッホ、転送陣でそこまで出来たら流通業界は大慌てですよ」
「それもそうですわね」
しばらくは他愛もない話をしつつ馬車を進めましたわ、途中で魔物に一回遭遇した以外は特に問題も無く目的地のペンノの街に着きましたわ。
街の門をムーロさんの商人ギルドの証明書で簡単に通ると街の中は行商人や品を求めてくる人達で賑わっておりました。
ワタクシとマウナさんは馬車を降りると背伸びをします、偽装のため安っぽい馬車だったせいかケツが痛くて困りますわ!
「やっと着きましたわー!」
「思った以上にハードな依頼でしたね」
ワタクシ達が一息ついているとベティさんが水を差してきました。
「目的の建物に行くまでが護衛任務よー」
「わかっておりますわ、ですがそれもすぐそこじゃないですのよ」
「そうよぉ、だからこそ気を抜いちゃダメなのぉ」
く、正論吐きやがってですわ。もしも最後に襲撃するなら目的の場所での交渉中か交渉後の帰り道のどちらかですものね。
そんな話をしつつ結局最後はあっけなく目的地の商人ギルドの建物に着きましたわ
「いやー、皆さんこの度は本当にお世話になりました」
「いえいえ、確かに大変な依頼でしたが良い経験になりましたわ」
ワタクシ達の任務はここで終わりですわ、取引交渉の場に届けるまでが依頼ですものね。ここに着いた時点でワタクシ達の依頼は達成となりますわ。
「マウナさんにアルティアさん、ベティさんも短い間ですがお世話になりました」
「はいこちらこそ」
「報酬と追加報酬分ですがギルドの方に渡しておきますのでギルドから受け取ってください」
「わかりましたわ」
こうしてムーロさんと追加報酬の話をし依頼完了のサインを頂きました
今日はこの街でムーロさんが取っておいてくれた宿で一晩泊まり翌日に帰ることとなりましたわ。
ムーロさんが用意した馬車はワタクシ達が帰りも使うことになりましたわ、ムーロさんはまた別に馬車を用意しておりそれで帰るそうですわ、護衛もこの先は商人ギルドが雇った傭兵に引き継がれます。
「それではムーロさんワタクシ達はここまでになりますわ」
「はい、あなた方に護衛を頼んで正解でしたな。冒険者ギルドのガリアス殿にもそのように報告させていただきます」
ワタクシ達を高く評価してくださるようですわね、そして今後の事をワタクシはムーロさんに話します
「ムーロさん申し訳ありませんが、一つお願いをしてもよろしいかしら」
「なんでしょうか?」
「もう少し先にはなってしまうのですが。ワタクシ達とある場所で他国との交易をしたいと思っておりますの」
「他国と交易ですか?」
ムーロさんの目が承認の目になりましたわね。
「ええ、詳しくはまだ決まっておりませんのでお話は出来ませんが、その時にムーロさんには橋渡し役をお願いしたいのですわ」
「ふむ」
「きっと悪い話ではないはずですので考えていただけると助かりますわ」
ワタクシの言葉にムーロさんは考え込んでるようですわ。
「なるほど、今回はマナカさん達にはお世話になりましたからな。前向きに検討させていただきましょう」
「ありがとうございます」
「ですが詳しくは決まってないとの事ですし『とある場所』とおっしゃてた所から何か今は話せない事情があるのでしょう?」
「察しがよろしいですわね」
「それはマウナさんについてですな」
ワタクシとムーロさんの話を聞いていたマウナさんが話に割って入ってきましたわ。
「はい、すいませんがもう少し時間を頂きたいと思っています」
「わかりました、貴女方とは妙な縁を感じます、今はそのことは聞きはしませんので話がもう少し纏まったら聞かせていただけますな?」
「はい、それは必ず」
「では私への連絡方法もコルリスの冒険者ギルドに伝えておきましょう」
「ええ、その時はよろしくお願いしますわ」
「それでは私は商談の準備に入るのでこれで失礼します」
ワタクシ達はムーロさんと別れ街を見て回ることにしました。
夕方近くになりお腹が空いてきたとの事で夕食を皆さんで取ることにして酒場に入った所までは良かったのですが。
「す、凄く人が多いですね」
「困ったわねぇ、座る場所がないじゃない」
二人が言った通り人人人ともの凄く混んでいますのよね
「これは座れそうもありませんね、マナカさんどうします?」
マウナさんに言われてどうしようかと考えていたところ、その時ですがスーっと頭がクリアになった気がしましたの。
「多分すぐに席が空くと思いますわよ、約三分後にあそこの三人組がいる席が、その更に二分後に奥の席の男女のペアが座ってる席が空くはずですわよ」
ワタクシの言葉に三人は目をパチクリさせております。
「マナカさん何でそんなことが分かるんですか?」
マウナさんが不思議そうにワタクシに聞いてきました。
確かに、何故ワタクシはそう感じたのでしょうか?
「何故でしょう? ワタクシにもわかりませんわね」
ワタクシがそういった時に本当に三人組が席を立ち出ていきましたわ。
「歩、本当に。で、出ていきましたね」
「ちょっと、奥のペアもそろそろ動きそうよ」
何と言いますか自分でも信じられませんわ……
「自分で言っておいて何ですが不思議な事もあるのですわね」
ワタクシ達は空いた席に着いて食事を頼みましたわ。
食事の間ワタクシはさっきの自分に起きた出来事を少し考えておりました、そして食事中も周りの席を見ると大体何時頃そこに座る客たちが出ていくのかが分かるのです。
「マナカちゃんどうしたの?キョロキョロしちゃって」
「不思議とどの客が次に席を立つかが分かるのですのよね」
「なにそれ、不思議ねぇ」
「ですわね」
とりあえずはそれだけの話ですのでワタクシ達は食事を終えた後はムーロさんに教えられた宿に行き休むことにしましたわ。
――
――――
そして、次の日。
ワタクシ達は荷物を纏めて厩に向かいベティさんを御者としてコルリスの街へと帰ることにしましたわ。
道中は何事もなく順調に進み予定より一日早く街に着くことが出来ましたわ。
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