第二十九話 オークと大奥って発音が似てませんこと?

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第二十九話 オークと大奥って発音が似てませんこと?

 ワタクシ達はオーク盗賊団が良く出るという現場付近にやって参りましたわ『不毛な地』と呼ばれる地域に近いためか少し寂しい雰囲気ですわね、『商業国家フォルシェス』からコルリスの街に行くに不毛な地を横切るのが近道なためかここで狙われることが多いようですわね。  不毛な地と言うのは二百三十年前の人魔戦争で人間の軍が陣を敷いておりネクロマンサーでもある『魔王カステリオ』が最後に人間を呪った影響で未だ雑草しか育たないような土地だそうですわ……魔王すごくね?  あと商業国家フォルシェスというのは商人ギルドの本拠地がある国だそうですわ、政治形態も国王はおらず議員制で国を運営してるそうですわ。  ムーロ商会の本拠地もフォルシェスにあるとのことですわ、コルリスからも近くコルリスの冒険者ギルドにたびたび商人から依頼が来るのはそういった理由も有るとのこと。  フォルシェス何時かは行かねばならぬ国のようですわね。 「この辺りで襲われたという情報が多いわねぇ」 「あ、あの森に潜んでるのでしょうか?」 「アンルフェイの森ねぇ、可能性は高いわね。あそこのモンスターは森から出てくることは無いけど凶暴な魔物が多いものねぇ」 「え、えぇ。に人間が隠れるには不向きですが、オ、オークとなれば格好の隠れ家になると思います」  ベティさんとアルティアさんの話を聞くにアンルフェイの森というのは凶暴な魔物が生息していて人間が入るには危険な場所のようですわね、しかしそこに住む魔物が森から出てくることはないとの事。 「そうなりますと、森に入るのは下策ですわね。ここら辺で待つのが確実ですわね」 「そうねぇ、フォルシェス付近からコルリスに向かうルートで通過してみましょう」  ベティさんが御者をしつつそう言ってフォルシェス方面に向かいます。  フォルシェスに向かって少ししたら争うような音が聞こえてきました、どうやら先客がいたようですわね。 「ベティさん! 急ぎますわよ!」 「了解よん」  ワタクシ達が音のしている方向に向かっていきますと一台の馬車が十匹近いオークの集団に囲まれておりましたわ。  ワタクシ達の姿を見た商人の親子が声を張り上げます 「どなたか助けてください!!」  父親らしき男が叫びましたわ、しかしこれは下策ですわよ! 「ばか! 叫んではいけませんわ!!」  ワタクシは慌てて忠告しましたわ、ここで叫んではオーク達を刺激してしまいます。 「貴様!!」  しかし遅かったようです、オークの一匹が叫んだ父親を棍棒で殴り飛ばしました。 「お父さん!!」  フードを被った子供が父親の事を呼び走っていきます、声からして娘さんのようですわね……ん? マナカセンサーに反応あり! これは急いで助けねばなりませんわねこのままではあの娘さんがR18状態にされてしまいます! 「ベティさん急いでくださいまし! アルティアさんはすぐに治療できるよう準備お願いしますわ! マウナさんここから魔法でオーク達を牽制してくださいな」  ワタクシは全員に指示を出しワタクシ自身もストーンバレットでオーク達を牽制します、ワタクシの言葉を聞いたマウナさんも火の魔法で援護射撃をします。  ですがオーク達は冷静に対処し扇形に陣形を整えております。 「随分と戦いなれてる連中ですわね」 「あの、陣は……まさか!」 「マ、マウナさんアレし、知ってるんですか?」  オークの陣形を見て何か思う事があったようなそぶりのマウナさんにアルティアさんが問うておりました、マウナさんはアルティアさんの問いにこくりと頷きます。 「ファーレ魔王領のオーク防衛隊の敷く陣です」  馬車が商人親子の近くで停止しますと、マウナさんの話を途中に馬車から降り立ちます、アルティアさんがすかさず殴られた商人のもとに向かいワタクシも娘さんの所へと行きますわ。  ベティさんとマウナさんはオークに対峙しております、ベティさんは盾とメイスを構え臨戦態勢に入っておりますわ。  先ほどマウナさんが言いかけておりましたが、どうやらこのオーク達はにファーレ魔王領の関係者のようですわね……少々不味いかもしれませんわね。  ですが見過ごす事は出来ません、退治が依頼ですしね。  アルティアさんが治療を終えるとワタクシは親子にさっさとこの場を離れるように言います 「さ、早くお行きなさいなここはワタクシ達が引き受けますわ」 「は、はい。ありがとうございます」 「そ、そろそろ戦闘に入りそうです、急いでください」  親子はワタクシ達に頭を下げると自分たちの馬車に向かっていきましたわ。  オークが敷いた陣から低めですがよく通る声がしました。 「ふむ、あの馬車の親子を逃がすか……ならばお前たちの積み荷を頂くとしよう」  扇状の陣から右目に傷のあるいかにもといった感じのオークが姿を現しましたわ。  ワタクシはオークを見ると嬉しくなってきました。ワタクシ決してオーク趣味じゃないですわよ。なんと言いますかあのオーク凄く強いと思いますのよね。 「あら? マナカちゃん何ニヤニヤしてるのよ」 「あら、そういうベティさんもニヤついておりますわよ?」  ベティさんがワタクシがニヤついてると言いますがベティさんもニヤニヤしていますわよ。  どうやらベティさんも同じようですわね、何故かあの傷有りオークと戦ってみたいのです、襲撃者やモンスターとは違う武人のオーラというのをあのオークから感じますのよ。  ついこないだまで普通の超エリートJKだったワタクシが武人なんてものと会う機会なんて無かったはずなのに、あのオークからはそのオーラを感じ取ることが出来ておりますの。  傷有りオークもワタクシとベティさんを見るとうっすら笑みをこぼしましたわ、しかしマウナさんを見た瞬間に驚いた表情に変化しましたわ。 「な……ひ、姫さま……」 「……」  嫌な勘は的中するものですわね。 「ひ、姫さま?」 「どういうこと?」  アルティアさんとベティさんは何の事か分からないといった様子ですが、それも当然ですわねマウナさんが魔王だとは伝えておりませんもの。いずれ二人には話すつもりでいましたが少しばかり早い段階でバレてしまいそうですわね。 「セルカド……やはり貴方でしたか、あの陣を見て確信しました」 「姫さま、いや。御父上がああなった以上今は姫さまが魔王となられているのですな」  あー、あー。やっぱりこうなりますわよねー。セルカドと呼ばれたオーク色々語ってくれちゃってますわね。 「それともこんな場所にいるという事は……魔王領はまさか勇者に?」 「安心してください、国は無事です貴方がいなくなった後国土の約三割は持っていかれてしまいましたが何とか国は無事です」  これはもう誤魔化せませんわね、ワタクシはベティさんとアルティアさんにどう説明するかを考えだします。説明後二人がどう思うかはあの二人任せになりますわね。 「では、何故こんな所にいるのです!」 「私は世間をあまり知りません、ですからこの方々と世間を見ているのです! そしてそこにいるマナカさんと国を立て直すのです」  セルカドとマウナさんの会話……止めたいけど止めることなどできませんわね、ワタクシも覚悟を決めましょう。  ベティさんがワタクシに問うてきますわ、当然の反応でしょう。 「マナカちゃんこれどういうことなのよ? マウナちゃんが魔王って」 「ベティさんもアルティアさんも黙っていたことは謝罪しますわ。後で必ずお話しますわ」 「……分かったわよぉ」 「は、はい。わかりました」  とりあえず納得はしてくれましたか。しかしあの二人の会話はどんどん進んでいきます。  そして、セルカドはベティさんを指さしますと。 「マナカとやら、姫さまがお前と国を立て直すと言ったがお前の実力を見せてもらおう!」 「あ、セルカドその人は……」  ん? あのブタ野郎、ワタクシとマッシブオカマ野郎を間違えるとは何て失礼な! 「あらー、お姉さんはマナカちゃんじゃないわよー」 「マナカという高貴な響きで何故そこのマッシブオカマ野郎と間違えるのですか失礼な! ぶっ飛ばしますわよ!」 「そ、そうか。すまない」  素直に謝るブタ野郎、そして指さされたベティさんが前に出ますわ。 「マナカちゃんごめんねー、あの人は私を指名のようよ」 「ぐぬぬ……ですわ」  ベティさんはセルカドの前に立ちますと盾とフレイルの方を構えますわ、そしてセルカドに向かって。 「セルカドちゃんだったわね。私はマナカちゃんじゃないけどマウナちゃんの仲間のつもりよ、私の実力でいいのなら魅せるわよ」  ニュアンス的に見せるじゃなく魅せるつもりですわね。 「ベティさん……セルカドに皆さんの強さを教えてやってくださいお願いします」 「いいわよー、そのお願い任されちゃうわよん」 「ベティさーん、ワタクシが控えておりますので負けちゃっても大丈夫ですわよー」 「マ、マナカさん……ベティさんをお、応援しましょうよ」 「ワタクシもあのセルカドと戦ってみたいのですわ……まあ、今回はベティさんに任せますわ」  オーク陣営もセルカドが他のオークを下がらせます。 「セルカド様、あの方が本当に?」 「ああ、元主の御息女を間違えるはずがない」  オーク達の会話が聞こえてきます。  セルカドは盾に短槍を構えて前に出ましたわ。  そしてベティさんとセルカドが対峙しましたわ 「ふふ、これは面白いカードですわね」 「そ、そうなんですか? わ、わたしには良く分かりませんけど」  ワタクシや、アルティアさんにマウナさんとオーク達が見守る中戦いの火ぶたが切って落とされました。
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