第三十三話 クソ男と美幼女どっちが好き? 聞くまでもなかろうよ

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第三十三話 クソ男と美幼女どっちが好き? 聞くまでもなかろうよ

 音のする方へ向かって走っておりますとはっきりと声も聞こえてきましたわね。 「クソ! クソ!! ここは二階層じゃないのかよ!」  男の声ですわね、調子こいてやってきた冒険者ですわね? 「私たちより先に入った冒険者っぽいわねぇ」  ベティさんも同意見ですわね。 「わ、若様! ぎゃー!!」  誰かやられたようですわね。 「若様ってどこかの御貴族様かしら? しかも若様って言った方なんかやられてますわね」 「そんな感じねぇ、護衛の人じゃないのぉ?」 「お、お前なんとかしろよ。俺は主人だぞ奴隷なら主人を助けろよ!!」  ガス!っという殴ったような音が近くで聞こえてきますわね。 「あうぅ……い、痛い。ごめんなさいごめんなさい、うぐぅ……叩かないでください……」 「はっきりと声が聞こえるわねぇ……しかも会話内容からして関わりたくない種類の人間のようねぇ」 「ワタクシぶっちゃけ、男の方は助ける気ゼロですわよ」  調子こいて来たバカが奴隷を殴ってるのかしら? 胸糞悪いですわね。  つーか奴隷連れてダンジョンとか冒険者舐めてますわね! しかも声からして少女の……  ん? ン? んー!? マナカセンサーが反応しておりますわよ!! 「美少女の反応ですわよ!! 皆さま急ぎますわよ!」  ワタクシは走る速度のギアを一段階上げ少女の声の方に向かいます。 「わ、わ、わ、マ、マナカさん早いですよー」 「今、ワタクシは風になる!!」 「何わけわかんないこと言ってるのよ!」 「流石はマナカさんですね」  ワタクシは三人を置いて急いで現場へと向かいました。  既に死体が三つありますわね、全滅一歩手前の状況ですわ。  そしてワタクシが簡単に状況を確認していたところ、奴隷少女と男の両方に襲い掛からんとする魔物の姿を確認しました。  その魔物は三メートルほどの大きさのスケルトンで手首から先がサーベルになっております。  そのサーベルによる一撃が今、二人に振り下ろされようとします。  ワタクシは躊躇うことなく、奴隷少女の方に走ってゆき奴隷少女を抱えるようにして転がりサーベルの一撃を交わします。  ワタクシが避けた一撃が隣にいた男を切り裂きました。 「うぎゃー!! いてぇ……俺は偉いんだ! くそー!」  切られた男が何か叫んでおりますが気にしませんわよ、少女は助けましたから。『()()()()()()』ここ重要ですのよ。 「間一髪ですわ、ケガはありません?」  ワタクシはそう奴隷少女に声を掛けますわ、奴隷少女はこくこくと頷きました。  尖った耳に褐色の肌、濃い銀色のロングヘアー、幼くも整った顔立ちに少しツリ目がちの大きな目で瞳の色は金色。  しかし衣服はワンピース状のボロ布、体中に殴られたような痣がありやせ細っております手の甲の部分に魔法陣のようなモノがありますわね、見てて痛々しいですわ、ですが! マナカセンサーに間違いはありませんですたわ。 「グゥーレイトッ!!ダークエルフの美幼女ですわね!!」  ふぅ、心の中で叫んでしまいましたわ。 「マナカさん! 何叫んでるんですか。 その子がビックリしてるじゃないですか」  マウナさん達が到着したようですわね、しかし叫んでいたってワタクシが?  奴隷少女の方を見ますと、若干引き気味の顔でワタクシを見ておりますわね。  そんな表情も可愛いですわね、お姉さん照れちゃいますわ。 「え? ワタクシ叫んでました?」 「聞こえてましたよ、美幼女ですわね!って」 「心の叫びが漏れていましたか……ワタクシとしたことが修行が足りないようですわね」  そんな事を言ってるとガキン! という音がそばで聞こえていますわね、音の方を向きますとベティさんがバックラーで巨大スケルトンの攻撃をいなしておりましたわ。 「マナカちゃん、気が済んだのなら手伝ってくれないかしら?」 「了解ですわー、アルティアさんその子の治療をお願いしますわね、男の方はアレ致命傷なんで放置でいいですわよ」  ワタクシがそう言うと男が声を発します。 「た、たすけてくれ……礼は弾むから……お、お願いだ、ゴホッ!」  男のお腹からは無残に臓物がこぼれております、しかも傷口からは黒い瘴気のようなものが出ておりますわね、あのサーベルに斬られるとヤバそうですわね。 「アルティアさん無駄だとは思いますが一応その男にも回復魔法を、このような可愛らしい幼女を殴るようなクソ野郎は助けたいとも思いませんが、一応渡世の義理と言う奴ですわ」 「ちょっとー、早くしてよねぇ。コイツ結構ヤバイモンスターなのよ」 「あー、そうですねスケルトンプランドラーは手首の剣で切られると傷の治りが悪くなる呪いをかけてくるので解呪できないとキツイ相手ですね」 「マウナちゃん! 解説はいいから貴女も手伝って!」  スケルトンプランドラーと言うのですね、やはり刃に呪いがありましたか、あの男ますます助かりませんわね。後あのお二方、余裕っぽいですわね、とはいえ放っておくのもなんですのでベティさんを手伝いますわよ。 「――ファイア・アロー!」  マウナさんがベティさんに言われ思い出したように魔法で攻撃します、炎の矢がスケルトンプランドラーに直撃しましたがよろけただけですわね。 「アルティアさん腕力強化お願いできます?」 「わ、わかりました」  アルティアさんが強化魔法をワタクシに使用します 「――ピュイサン・メンティシャン!」  アルティアさんの掌がワタクシの背中に添えられるとうっすらと身体から赤いオーラが出はじめます、すると力が湧いてくる感じが致しました。 「うふふ、いい感じですわよ。強化魔法で保険もかけましたし、これで試したいことが試せますわ」  ワタクシは骨の方に向かって歩き出しますわ。 「ベティさんとマウナさん少しだけソイツの注意を引き付けてくださいな、試したいことがありますのよ」 「分かりました」 「了解よん」  ベティさんがスケルトンプランドラーに向かって横にメイスを振りぬきます。スケルトンプランドラーって長い名前ですわね! プランドラーでいいですわね!  プランドラーはメイスを避け少しバックステップをするとそこにマウナさんのウィンドブロウが炸裂します、体勢を崩した骨をワタクシは見逃しません 「お二人ともナイス連携ですわ!」  ワタクシはステップしてプランドラーに近付くと右ローキックで相手の足を叩き折りにいきます。  ローキックで足を潰されたプランドラーが膝をつくとワタクシはプランドラーにがっぷりと組みつきました、この位置ならサーベルを振り下ろすこともできませんわね。  プランドラーが凄い力でワタクシを振りほどこうとしますが、アルティアさんの魔法で強化されたワタクシの力なら問題なく抑えることができます、これなら強化無くてもいけましたわね。 「さあ、もっと抵抗してみなさいな!」  ガタガタと体を揺らしながらもがくプランドラーですが、ワタクシが完全に抑え込んでいるので動けないようですわね。こうなってしまえば身長差一四〇センチなんて関係ありませんわね。 「ふふ、では止めと行きましょうかしら?」  ワタクシはプランドラーの首の右側に自分の頭を差し込み左手で相手の助骨の背中部分を掴みます。 「――ストーン・ウォール!!」 「え? ストーンウォール何故?」  マウナさんが叫びます。  石で出来た一メートルほどの高さの壁がワタクシの足元からせり上がります。  ワタクシはそこからプランドラーを抱え上げ後頭部を叩きつけるように自分の背中から尻もちをつくように倒れこみますわ。 「雪崩式の元祖ブレーンバスターですわよ! よーく味わいなさいな」 「は? 普通の人間ならあんなの食らったら死んじゃうわよぉ!」  ベティさんが呆れながら叫んでおりますわね。  高さに相手とワタクシの体重を利用して相手の頭を固い地面に叩きつける、まさに殺人技ですわね。  でもこれ相手が複数いたら使えませんわね、そう考えつつもプランドラーの後頭部を地面に叩きつけます、嫌な音と共に頭蓋骨を粉砕するとプランドラーは動かなくなり瘴気を発しながら消えていきましたわ。 「ストーンウォールを使っての雪崩式はまだ改良の余地がありますわね」  ワタクシはそう呟きながら立ち上がりお尻の汚れをはたき落しますと。 「ストーンウォールのあんな使い方初めて見ました……」  若干呆れ気味のマウナさん。 「――す、すごい……」  奴隷少女もワタクシの方を見守っていましたので、ワタクシは奴隷少女に笑顔でピースサインを送りますわ、すると奴隷少女は顔を赤らめ視線をそらしてしまいました、うっは超かわいいですわ。  奴隷少女の可愛さを再確認し、ワタクシはクソ男の方に視線をおくりアルティアさんに状態を聞きます。 「さて、アルティアさんそのクソ男の状態はどうですの?」 「だ、ダメです。 傷を治すにはこの呪いを解除しないといけませんが。せ、聖水がありません」 「そうですか……ん? ちょっとお待ちなさい。そうなるとこの先もあのプランドラーがいたら無傷で倒さないといけませんわね」 「いえ、す、少しの傷なら治せますが、ち、致命傷となると呪いを解除しないと回復しきれません」  男はワタクシ達の会話を聞いて泣きそうになっておりますわね。 「な、なんで。この俺がこんな目にあって……そこの薄汚いダークエルフが助かってるんだよ、ゴフ!」  男は恨めしそうな顔で奴隷少女を睨んでおります、そんな男の顔を見たベティさんが眉を顰めました。 「貴方ゲオルグ・センネル伯爵の息子のアルバート・センネルね……センネル家の道楽息子、貴方がなんでこんなとこにいるのかしら? 大方この新エリアで大発見でもして親父さんに良い所でも見せようとしたのかしら?」  やはり貴族のようですわね。薄汚いって殴ってやろうかしら?  ワタクシは小声でアルティアさんにアルバートの事を聞いてみました。 「アルバートってコイツどんなヤツなんですの?」 「わ、わたしも姿は初めて見ましたが、い、良い噂は全く、き、聞かないですね。父親の権力を傘にやりたい放題だとか、使用人の妻を無理やりその手籠めにしたりとか立場の弱い者を嬲り者にしたりとか良い噂は全くないです」  どうしようもないクズですわね。 「そ、そうだよ……結果は、グハ……このざまだがな」 「愚かな……貴方が死ぬのは勝手ですわよ、ですが貴方に付き合わされて死んでいった方が哀れで仕方ないですわね」  ワタクシは呆れておりました、クズにはお似合いの惨めな最期ですわね。 「まあ、いいですわ。最後に遺言だけ聞いてあげますわ特別サービスですわよ」 「そ、その奴隷が助かって……グフ、俺が助からない……とかあってたまるか、ゴフ……お前たち俺を助けなかったことを後悔しろ……」 「魔力反応です!」  マウナさんがそう言うと男は何かを取り出し上に放り投げるとそのまま動かなくなりました。  そして放り投げたモノは鳥の形になり飛んでいきましたわ。 「どうやらどこかにメッセージを送る魔道具のようですね」 「男の最後の言葉からしてロクでもないことになりそうですわねぇ……」  男の最後の言葉からして嫌な予感がしますわね……
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