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第三十七話 とりあえずここで探索区切りますか
ワタクシ達は鍵を拾い宝箱を探します。
「た、宝箱はどこにあるのでしょう?」
「そういえば、この部屋に入った時には見当たりませんでしたね」
ワタクシも良くは覚えておりませんが確かに見当たらなかったと思いますわね。
「確かに見た記憶がありませんわね」
アルティアさんの疑問にワタクシ達が考えておりますと、ナルリアちゃんがワタクシの腕を引っ張り祭壇を指さします。
「――あそこ、宝箱がある」
指さされた方を見ますと祭壇の上に宝箱が出現しておりました。
「どういう仕組みになっておりますの?」
「知らないわよ」
「興味深いですね」
宝箱だけ頂戴して逃げることは許されないという事ですわね。
取り合えず開けてみましょう、そうしましょう。
「よーし、開けてみましょう」
「何が入っているのか楽しみねぇ」
ワタクシ達は祭壇の宝箱の元に向かいます、そして鍵を拾ったマウナさんが宝箱の前に立ちます。
「では、開けますね」
鍵を鍵穴に差し込み回転させるとカチっという音が聞こえます。
「お姉さんもこれは何度か経験してるけどそれでも緊張するわねぇ」
「では開けます」
ゴクリと誰かの喉が鳴りました、ワタクシも緊張してまいりましたわー。
ガチャっという音共にマウナさんがフタを空けますとそこには――
「あら? 本ですわね」
そこには一冊の古びた本が入っておりましたわ、しかしあの本少し前に見た気がしますわね……ん? まさか。
「マウナさんそれってまさか?」
本を手に取って表紙をまじまじ見ていたマウナさんが。
「これ、召喚の書ですよ」
「やはり、最近どこかで見たと思いましたわ」
「ええ、ただしマナカさんを呼び出した時に使った物とは少し違います」
マウナさんを中心に全員が本をまじまじと見ておりますわね。
「あらー、お姉さん初めて見るわよソレ」
「わ、ワタシもです。う、売ればかなり高値になると聞きました」
「へぇ」
召喚の書当たりのアイテムですわよね?
「これ、私が貰っても良いでしょうか? あ、いえ。買い取るということでいいでしょうか?」
マウナさんが召喚の書を買い取ると言い出しますわね。
まさか、ワタクシ以外の戦力の増強?
「マウナさん、異世界からまた呼び出すおつもり?」
「はい、マナカさんを信頼して無いわけではないのですが戦力は多い方が良いと思いまして」
「ああ、お国の再建のお仲間を呼び出したいのねぇ、ならお姉さんはお金はいらないわよ」
ベティさんが買い取ると言ったマウナさんに対してお金は必要ないと言い出しました。
あー、困りますわね最初にこれ言われると皆さん異議が唱えられませんわよ。
「わ、ワタシもお金は別にいいです」
ほーら、アルティアさんまでこうなってしますわよね。
ここはワタクシが断固阻止ですわ
「いけませんわ! 報酬は労働の対価ですのよ。しかるべきものが支払われないのは間違っております」
「あらー、でも依頼に対しての報酬はギルドからちゃーんと出るわよ」
「そ、そうです。それに召喚の書は取引例が少ないので実際の相場は不明です」
「――ワタシは良く分からないのでマナカ達に任せる」
労働への対価これはとても重要な事ですわよ、ワタクシのいた日本では労働に対する適正の対価が払われてない事が多く問題にもなっております、これは由々しき問題ですのに。
「私達はいいって言ってるのよ、素直に受けておきなさいよぉ」
「いいえ、ワタクシは仲間であるからこそキチっとすべきだと言っておりますの」
ベティさんは意外にこういった事には頑固ですわね。
「マナカちゃんってこういう事は細かいわよねぇ」
「ベティさんが雑なだけですわ、金銭的な事はキチっとせねばなりませんのよ」
ワタクシとベティさんが言い合っておりますとマウナさんが口を開きました。
「私もマナカさんと同じ考えです。
これはあくまで私達全員で手に入れたものです、私だけが報酬を得る形になってはいけません」
「し、しかし。マウナさんはそれを買い取るだけの、も、持ち合わせがあるのでしょうか?」
確かな相場は分からないですがそれなりの値段がするのは分かります、そしてマウナさんはそこまで余裕があるとも思えません。
「マウナさん、お金はどうされますの?」
「あ、はい。支払いは後になってしまいますが国の再建が始まり安定してきたらファーレ魔王領で買い取るという形にしたいのですが、皆さんはそれでいいですか?」
ふむ、報酬は後払いですが落としどころとしてはこんなもんでしょうか。
「ワタクシは皆さんが良ければそれでかまいませんわ」
「マウナちゃんがそうしたいのなら私は当然いいわよー」
「わ、わたしも構いません」
「ありがとうございます、必ず支払います」
さて、この召喚の書ってその場で使ってすぐに呼び出せるものかしら?
経験のあるマウナさんに聞いてみましょう。
「マウナさんその書は今すぐに使って大丈夫なものなのですか?」
「すぐに使えるのなら私も立ち会いたいわねぇ」
「そ、そうですね。わ、わたしも見てみたいです」
マウナさんは首を横に振る。
「召喚の媒体ではありますが、ポンと使って呼び出せるものでもありませんね。割と大量の魔力が必要になりますし簡単ではありますが手順を踏まないと失敗するか暴走する危険性もありますね」
お手軽アイテムではないようですわね。
「ああ、そういえば昔に召喚暴走事件があったわねぇ。サルジーンの大馬鹿たちが召喚の書を集めまくって一気に使用したため相当数の宮廷魔術師が魔力枯渇で死亡したあげく数百人という異世界人が一気に呼び出された事件が」
「あ、き、聞いたことあります。『豊原島中津国』の方々の話ですね」
「あの暴走でサルジーンが更に貧乏国家になったのよねぇ、しかも召喚した集団に逃げられたのよねぇ」
豊原島中津国? 豊葦原中津国ではなく? 大国主と少彦名でしたかしら?国造りの日本神話ですわね。
「面白いですわね、ワタクシの同郷の方が集団でこの世界に来たという事ですわね」
「マ、マナカさんの、ど、同郷の方々?」
「どういった経緯でその名前を付けたか分かりませんが、豊原島中津国という国はワタクシがいた日本の神話に出てくる国の名前を参考にしたものでしょう、そこから考えるにワタクシのいた日本から来た人々と考えるべきですわね」
「な、なるほど」
いつか会いに行きたいものですわね。
「とりあえず、そのような事にならないよう我が城の召喚の間で行うことにします。ですが召喚の儀を見たいのであれば見ていただいて構いませんよ」
正直ワタクシも見たいですわね。
「え? いいのー。そんなの見たいにきまってるわよー」
「――ワタシも見たい」
「わ、わたしも」
結局全員見てみたいと。
ですが良い機会やもしれませんわね一度皆さんにファーレ魔王領を見ていただきましょう。
「でしたらマウナさん一度国に戻ってはどうでしょうか? 頼んでおいた作物の件もありますし」
「そうですね、一度皆さんに我が国を見ていただきましょう」
「た、楽しみですね、ま、魔王領なんて初めてです」
「私もよ」
さあ、召喚の書の事はここまでにしましょう、そろそろ戻るべきですわね。
「さて、それはそれとしてそろそろ戻るとしましょう」
ワタクシがそう声を掛けますとベティさんだけは反対のようですわね
「いいや、流石に時間も時間ですし。皆の疲労を考えるなら今日はここでキャンプをして明日の朝の時間帯に出発すべきね」
確かにそれも有りですわね。
「皆さんはどう思います? 急ぎ戻るか休んでからにすべきか」
「そうですね、私はベティさんに意見に賛成です」
「そ、そうですね。こ、ここなら安全に過ごすことができると思いますよ」
「――ワタシも疲れた」
どうやら流石にお疲れモードですわねぇ、それなら仕方ありませんわね
「分かりましたわ、それではキャンプの準備でもいたしましょう」
ワタクシ、とあるアニメの影響でキャンプ技術も凄いんですのよ!
「ボスルームって不思議と他の魔物が入ってこないのよねぇ」
「あら?そうなると見張りは必要ありませんわね」
「ですが、油断はせずに簡易結界を張りますもし魔物が侵入してきた場合は警報を鳴らします」
「お願いするわねー」
こうしてワタクシ達はキャンプ準備を始めましたわ。
ワタクシも自信あったのですが……ベティさんの手際が良すぎてワタクシ出番がありませんわよ。
「ベティさんって、こういう事手際良いですわよねぇ」
「それは冒険者ですもの、マナカちゃんもまあまあ手際良いわよね」
く、なんちゃってキャンパーでは現役冒険者にはかないませんわね……
アルティアさんとマウナさんは……戦力外ですわね。しかし、アルティアさんってずっと現役冒険者でしたわよね?
ワタクシは二人の様子を見てため息をつきます。
「……アルティアさんとマウナさんは火でも起こしててくださいな」
「わ、わかりました」
「はい」
そして意外にもナルリアちゃんが石を集め簡易石窯を組み立てておりますわ。
「――ふふ、マナカの役に立つよー」
「ナルリアちゃん石窯組み立てるの手際よいですわね」
「――えへへー」
というか丁度良い石をどこから調達してきたのでしょう?
そんなこんなで準備は整いました。
「食事は燻製肉を焼くしかないというこの悲しさはどうにかせねばなりませんわね」
「そうよねぇ、石窯を作ってくれたのに、肉焼くだけは寂しいわよねぇ」
「他に食材は何がありますの?」
「肉以外だとパンとチーズだけです」
まあ、それだけあれば十分ですわね。
「思った以上に早く区切りもつきましたし贅沢に行きますわね」
ワタクシはそういうとパンにチーズを乗せてその上に干し肉を細かく切り乗せますと石窯で焼き始めますわ。
「トマトソースが無いので仕方ありませんが、これならそれっぽくなると思いますわよ」
この辺りで売ってるチーズは焼くととろけるチーズですのよね、ようするに簡易ピザですわよ。
「チ、チーズと、に、肉の匂いが、いい匂いですね」
「本当ですね」
うん、いい感じに焼けましたわね。
ワタクシがピザを取り出し皆に分けるとさっそく食事をすることにしましたわ。
「――おいしい!」
ナルリアちゃんがホクホク顔で食べております。
「――あの人の所の食事は不味かった……石のように固いパンと味のしないスープだけだったから」
「……」
ナルリアちゃんがうつむいてしまったのでワタクシはナルリアちゃんの頭に手を置いてなでながら。
「貴女はこれから自由になるんですのよ、今からこれからの事を考えておきなさいな」
「――うん」
少しだけ重い雰囲気になりましたがその後は、雰囲気を戻しワタクシたちは他愛も無い話をしながら食事を終え、就寝することとしました。
――
――――
そして、皆が起床しキャンプの道具を片付けるとワタクシ達は来た道を戻ります、途中何度か骨に襲われましたが大した被害も無く地上へと帰還しました。
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