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「大変だ! この国に嵐が来るぞ! 皆逃げろ!」
それは、それはもう大騒ぎ。
誕生日祭何てしている暇はありません。我先に逃げようとする家臣に皿を落とす召使、女王様がいつものように助けてくれると願う国民で溢れていました。
女王様は冷めた目で広場を見下ろしました。
「ばぁっかじゃないの。助けるわけないじゃん。誰かに縋って、良いところ取り? 王様気取りなの?」
都合のいいこの国民が嫌いでした。
元々「ドロシー」というブリキ人形だった彼女は、銀色のブリキを剥きだした人形でした。それは大層周りから嫌われ、国民からは虐めを受けていました。
復讐心を武器に、国の頂点に立ちました。
くぅ~ん。
大切な友人の犬のトトが近寄ってきました。真っ黒い体は不吉だと言われ、捨てられていました。そこをドロシーが拾ったのです。
そっとトトを抱きかかえ、あることを思いつきます。
「ねぇ、トト。あの臆病なライオンよりも強い貴方ならやれるわよね」
そう尋ねられたトトは盛大に頷くと腕から飛び出し、宙を舞います。
空中で見る見る大きくなるその姿は、ライオンよりも獰猛な姿です。
広場に降り立つと赤い四つの目が不気味に光り輝き、国民を見つめています。鋭い爪が地面に食い込むと首を傾げ、襲い掛かりました。
次々と食われていく国民達。
ですが、女王様が何とかしてくれると信じて祈り続けます。
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