灰色の雪の饗応 Sentence.1

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灰色の雪の饗応 Sentence.1

 女は非力だ。  昔付き合っていた男が言った。  確かに私は裕福な家庭で育った元孤児で、それなりに贅沢な暮らしをしていた女である。そう周りから見られても仕方がない。だが、その裏では孤児ということもあり二人の義姉達から執拗な虐めを受けていた。  十一の頃、国が戦争することとなり私は従軍した。家が嫌で出ていったという理由もあるが、本当は女というだけで弱く見られるのが嫌だった。  コンプレックスであるその言葉を彼は私に向けて放った。  そして私は、彼の首を、刎ねた。  🕛 🕛 🕛 🕛  かれこれ一カ月は雪が降り続いている。  国の北部にあるその村は長続きしている雪のせいか、食糧が底をつき始めていた。既に餓死する者も現れ、村長は頭を抱えた。  これほど長い雪は初めてで、動物ですらこの雪には耐え切れず死んでいく。  村の領主である貴族の邸宅の前では食糧を求め、多くの人が集まっていた。固く閉ざされた門は慈悲がなく、見捨てるかのように聳え立っている。  ここの領主の娘である姉妹は窓から蔑むような眼で、それらを眺めていた。  どんなに飢饉が来ようとも彼女たちの食事は豪華である。  それを知っていて彼らは集まってくる。まるで街灯の明かりに誘われて来る誘蛾灯のように愚かで、汚らわしく見えた。  早く、追い出してしまいなさい——姉妹は父と母に向かってそう訴える。  しかし領主たるべき者、そう易々と村人を見捨てる行為は出来ない。二人の願いは聞き入れることは出来ない。  召使に命じてごく少量の食糧を彼らに支給した。  次の日、その支給した分では足らず再び彼らは来た。  さらに次の日、次の日、また次の日。  貴族の倉ですら食糧が減ってきた。  止まぬ雪に誰もが不安を募らせる中、彼女が帰ってきた。  姉妹の一番下の娘——シンデレラが。  🕛 🕛 🕛 🕛  彼女はある日、この家の門前で倒れていたところを助け、養子にした。だが、プライドの高い二人の姉妹はそれを拒んだ。
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