灰色の雪の饗応 Sentence.1

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 父と母がいないところでシンデレラを呼び出しては、暖炉の灰を頭からかけそれを綺麗に落とすように命じた。最初はただの灰だけだった。それが次第にエスカレートし、灰を詰めたバケツの中に蛆虫や鳥の死骸、毒虫などを入れ始めた。  それが日課になりつつある頃、国が戦争を始めた。  突然シンデレラは従軍すると誓い、出て行ってしまった。  戦争が終わり、しばらくしてもシンデレラが帰ってこないことに死んだと思っていた。これでようやく貴族だ、と思っていた。  そんな矢先の帰還。  虐めのことを知らない父と母は心から歓迎し、宴を開いた。  これでもか、というほどの豪華な晩餐。  シェフはこの量に、今後のことを尋ねた。  いつ止むかわからない雪にこれほど大量の食糧を使っていいのか。浮かれていた彼らはその過ちに気づいていなかった。  父も母もその言葉に黙るしかなかった。  だが、その中で何の疑問も抱かない人物がいた。 「長い雪のせいで食糧難と言うのなら、村人の人数を減らせばいいのでは。村人が多いから食糧が足らないのです。そうですね……支給品で事足りる人数まで減らせばいいのです」  道徳心の欠片もない言葉に誰もが目を見開いた。  その視線も構わずシンデレラは淡々と言葉を続ける。 「領主なら合理的に判断しなければ村は滅びます。女や子供は将来に必要な存在です。女は子を産み、その子は成長すれば労働力となります」  彼女が言うのは最も、だ。  女性がいなければ子供を産むことも、後継者を生み出すことも出来ない。将来を考えると女性と子供を生かした方がためになる。  雪のように白い肌を持つシンデレラは氷のような冷たい視線をテーブルに向ける。
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