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貪欲暴食の兄妹 Sentence.1
深い深い森の中、美しい庭を持つ小さな家がありました。テラスが付いた立派なログハウスには幼い兄弟が暮らしていました。
ある日、その家に旅人が訪ねてきました。
どうやら道に迷い、森から出られなくなってしまったようです。腰には汚れ一つ付いていない立派な剣がぶら下がり、見た目から貴族の騎士だとわかります。
兄のヘンゼルは何故騎士が森で迷うのか不審に思います。
「泊めてあげたいのですが、ここは僕とグレーテルの分の食事しかありません。騎士である貴方様に振舞える食事はございません」
それを聞いた旅人は申し訳なさそうに頭を下げた。
「何と仕方がなきこと。不躾なお願いで申し訳ありません」
ヘンゼルは可哀想だと思い、責めて森から出られるように地図を渡しました。
騎士は深々と頭を落とし、礼を告げると足早に家から離れていきました。
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家を後にしてから数時間が経ちました。辺りはすっかりと暗くなり、虫の音一つすらしない恐ろしい夜が森を包みました。
いくら騎士とは言え、それは身なりだけ。
剣などを握ったこともなければ振るうことすら出来ない、素人。もし野生動物などが襲ってきでもしたら抵抗する術はありません。そう考えるだけで膝が震え、足が止まりそうになります。
不安に塗れた騎士は祖国を立つ際にこの森の恐ろしい噂を聞いていたのです。
光すら呑み込む恐ろしい森には人を食らう化け物がいる、と。どんなに優秀な騎士ですら赤子の手をひねるように殺されてしまうほど、強き化け物だそうです。
カンテラの明かりを頼りに森を進む騎士ですが、一行に出口が見えません。
貰った地図通りに進んでいるのです。
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