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○月××日
ガタンッ。
ガタンガタンッ。
隣の女は、模様替えが大好きだ。
しょっちゅう家具を動かしてる。
今日は朝から騒音妨害。
そういえば、世間では今日は休日だったか。
全く、迷惑極まりない話だ。
過去、我慢の限界に達した僕は、一度、大家に文句を言いに行ったことがある。
一緒に聞いてもらった末に、一言“生活音の範囲でしょ”と一笑に付されてしまった。
ついでに、“あんたも部屋に籠ってばっかいないで、たまには外にでも出たら?”
なんて、余計なことを抜かされたから、以来二度と行ってない。
ギ、ギギー…
おいおい、あんまり重たいもん動かすなよ。
床にキズがついたら、敷金かえってこないし、第一…
“あっ!”
ガタッ、バサバサバサッ。
ホラ見ろ、言わんこっちゃない!
ケガてもしたら、どうするんだ!
思わず立ち上がり、ハッとする。
いや。
僕が立ったところで、一体何ができるというんだ。
距離にして5メートル、でも、壁一枚を隔てた他人が。
“あ~、痛たぁ……うっし、やるか!”
ギー、ギギー…
壁の向こうから再び声がしてきて、僕はホッと力が抜けた。
ストンとクッションに腰を落とし、傍らの書物に手を伸ばす。
だが、開いたページの文字が、あまり頭に入ってこない。
ちぇ…どんくさいヤツ。
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