3、過去2(細い闇)

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3、過去2(細い闇)

 〈ナンスポ〉の冬合宿は、もちろんスノボ、スキー。何台かの車で夜に出発して、深夜に妙高高原につく。いつもお世話になっている宿で仮眠を取って、朝、少し遅い時間からゲレンデへ。  車の分乗も、運転者も集合場所でくじを引いて決める。私は自分が環先輩と同じ車でなかったことを残念がるよりも、環先輩とヒロミ先輩が違う車になったことをこっそり喜んでいた。  PAで何度かの休憩を取りながら、ついた妙高高原の宿は、〈ナンスポ〉の常宿で私たちはいつもの仮眠用の広めの部屋に通される。  車は5台だった。約20人の男女がひとつの部屋で雑魚寝をする。それは夏合宿ではなかったことで、ちょっとどきどきしていたけれどいつもの飲み会よりも静かに、用意されていたおにぎりを食べながら小声で話していたくらい。なんと言っても深夜だから抑えた声で話ながらみんな軽く呑んでいたと思う。  今回の冬合宿参加者の中で一人飲めない私は、すでにうつらうつらとしていた。誰かが持ってきたウォッカを深い睡眠を取るにためにとみんなが呑んでいるのを、眠たい記憶の端っこで覚えてはいるくらいに。  古い部屋は暖房で暖かかったけれど、数人の1年男子が押し入れから毛布を出して配ってくれた。お礼を言って受け取った毛布にくるまるように眠ってしまったのは、おそらく私が一番だったかもしれない。  眠りに落ちるときの最後の記憶は環先輩ではなくて、押し入れの襖がきちんと閉まっていなかったこと。視線だけで環先輩を探しながら、わずか10センチほどの隙間から見える闇から目を逸らすことができないまま、眠りに落ちていった。
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