憂鬱

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「ねぇハルカ、今更だけど夢って何かある?」 「夢ねぇーー? 何だろう」 「こんなこというのも何だけど、わたし大勢の観客の前で演奏するのが夢なの」 「へぇーそうなんだ? 楽器は?」 「バイオリン」 「えー、凄いじゃん!」 「でも大勢の客なんて呼べないし知り合いいないし、現実にならない夢だよ。大勢の前で演奏したら気分いいだろうなぁっていう……」    カウンター席では、目の前で野菜の天ぷらがジュージューといい音を立てて次々と揚がっていく。四角い皿に盛られた数種の天ぷらは私たちのテーブルに届き、今日の締めくくりには最高の一品だった。 「あー、美味しかったね! ハルカはこのあとどっち方面に乗ってくんだっけ」 「私はそっから地下鉄ーー」 「そっか。私は歩き。じゃここでね!」  心も体もリフレッシュして気分がよかった。 通り道にあるコンビニでチロの牛乳を買うと、私は家まで鼻歌を歌いながら帰った。 「チーロー。ただーいまッ!」 ワンワンワン……!  雨戸を閉め、チロにご飯をあげると時計の針は夜の10時半を過ぎていた。今日は運動して疲れたこともあり、シャワーで早々に済ませ床についた。
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