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「懐かしいなあ。この祭りで、親方と初めて会ったんだよな。なんか、串焼き奢ってくれたんだっけ…もう忘れちゃったな」
俺はスマホの画面をなぞって、ショウコとつき合いはじめてから今日に至るまで、思いついた時に撮っていた写真を流し見していた。
何かしていないと落ち着かない気持ちに駆られてしまい、スマホの次は鏡の前でネクタイのポジションを無駄に微調整――からの、念入りなまでのメガネ拭き。
背後のドアがノックされる。
慌てて落としそうになったメガネをかけ、メガネのケースに布をしまって、深呼吸の後に「どうぞ」と返事を返す。声が裏返った。
もう一度言うか、言うまいかと悩んでいるうちにドアがゆっくりと開かれる。
鼻血を吹き出した俺のタキシードとお揃いの、赤色のウエディングドレスを着たショウコが立っていた。
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