失われた時間を求めて第1章

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ぼくは眠剤を飲んでからでないと小説を書くことができない。そのことをラスティニャック青年に話したら、「それでもええやん」と何故か関西弁で返してきた。手書きでメモのように書いていくスタイルがぼくのなかで板についてきた。ラスティニャック青年には親友がいた。マルセル・プルーストだ。プルーストは全てのことを説明したい強迫観念にも似たスタイルをとっている。感受性が強く、ペンを落としただけでびっくりするチキンハートだ。 プルーストはクラシック音楽の素養もあったが、現代音楽やロックも好きだった。とくにプログレッシヴ・ロックのピンク・フロイドが大好きでピンク・フロイドのレコードアルバム「神秘」をすりきれるじゃないかとおもうほど、聴いていた。プルーストの部屋はコルクばりでなりたっており、防音設備が整っていた。バルザックとはライヴァル関係を保っていたが、バルザックがプルーストを訪ねることもあった。 プルーストの書く小説はしつこい描写が長々とした一文に魂が込められ、『失われた時を求めて』の主人公の「私」が見たこと、感じたことを全てを説明しようとするのでストーリーが全然進むことがない。そして、バルザックと同じ様にゲラに大量の書き込みを行う。プルーストはバルザックと違い、真の貴族であったので立身出世物語は書くことができない。産まれながらのお金持ちのボンボンなのである。だからラスティニャック青年が時々、金の無心を行ってくる、その時プルーストは気前よくお金をあげてしまう。 ぼくは議論が好きでドストエフスキーと議論することを好む。ロシアにぼくが行った時にドストエフスキーと出会った。チェルマシニャーという田舎でぼくはドストエフスキーを見つけてしまった。アンリトロワイヤが書いた『ドストエフスキー伝』をぼくは愛読していたので、議論のネタにこまることはなかった。ドストエフスキーが描く人々は悪の中に善があったり、善のなかに悪があったりと深い人間観察のエキスパートであることをドストエフスキーの人となりを考察する上で重要なファクターなのである。しかし、ドストエフスキーとは一緒にビジネスはできない。賭博狂で入って来たお金は全て賭博につぎこんでしまうためだ。
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