4.Shape Of My Heart

40/40
105人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
「それはお前もだろ。……あーあ。年末のクソ寒い夜に俺たちはこんなところで何してんだ? いい年こいてアオハルのお手伝いかよ」  自ら率先して──いや、むしろ強引に手伝い始めたのは、どこの誰だっただろう? イズはおかしい気持ちを堪えながら親友の肩を掴んだ。 「まぁまぁ、そう言わないで。年末なんだし、歳末助け合いだと思えばいいよ。二人が羨ましいのならリュウも恋すれば?」  その提案に両方の口角を思い切り下げ、リュウが心底嫌そうな顔をする。なんて顔だ、と失笑していると、そばにはいつの間にかダッシュが歩み寄ってきていた。 「えーと……なんていうか……。コウちゃんと駄目になってたら、バンドもきっと駄目になってたと思う。……ハルのこと、助けてくれて……その……」  この一年間のわだかまりのせいか素直な言葉が出て来ない。そんな弟の不器用さを承知しているイズは、黙って微笑み、小さく頭を振る。その反応にダッシュが「なぁ」と兄を呼んだ。 「年末だから帰仙したんだろ? なんでうちへ来ねぇんだよ。帰ってくればいいじゃん」  恥ずかしくなって目をそらす彼と驚きに言葉を失うイズ。どうやらこちらの問題が解決するのもそう遠くはなさそうだ。  やれやれ、とリュウが溜め息をつくと、ハルの肩越しにコウと目が合う。 すぐに心からの笑みがこぼれ、その容貌が思い出の人と重なる。それはほんの一瞬のことだったが、切なさと同時に自分の中にある空洞が何かで満ちるような、不思議な感覚をおぼえた。 『ああ、そうか……』  救われた──おそらくそれが最もふさわしい表現かもしれない。 【おしまい】
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!