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彼はすべてがハルと真逆だ。男らしくハンサムで、身長や骨格からして全然違う。匂い立つような色気があり、精神的に成熟した男しか纏えない余裕と包容力まで兼ね備えている。歌の実力だって雲泥の差だ。
卑屈な感情が靄のように広がって胸が苦しい。目を閉じているのが怖くなったハルは、ハッと目蓋を開いた。
「ねぇ、コウさん、もう寝ちゃった?」
声を掛けてみるが返事はない。背中に触れると、寝返りを打った彼女が温もりを求めるようにすり寄ってきた。
リュウが触れていたように彼女の頬に触れてみる。彼の手はきっともっと大きいのだろう──そんなことを考えていると、頬がピクリと動き、暗闇の中で大きな双眸が開いた。
「……どうしたの? 眠れない?」
うん、と正直に答えそうになった唇を慌てて笑みに変える。
「ううん、大丈夫。もう寝るよ」
そっとキスをして抱き寄せると、いつもの安らぎの中に混じって微かな焦燥感が芽生えた。
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