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死神さんと死にたがり
死のっかな。
不意にそう思って、アパートの屋上まで上がってきた。
下を覗くと、落ちたらグチャグチャになりそうなくらいの距離はありそうだ。
もしここから落ちたら誰か悲しんでくれるのかな。
いよいよ足をかけて乗り出した瞬間。
「そんな事したら予定が狂っちゃいますよー」
と、のんびりとした声がした。
「え」なんて間抜けな声出して振り返ると、ちょうど吹いてきた大きな風に煽られて、バランスを崩した私は屋上の縁の外側に滑り出してしまう。
それをのんびりした声の持ち主は、焦るでもなく手を伸ばし、私の腰をがっしりと捕まえた。
「あなた、あと1週間で死ぬのに勝手に死のうとしないでください。困りますよ」
「え」
あと1週間で死ぬ?
「私死ぬの?」
自分を指さして首を捻ると、目の前の彼は黒髪を触ってぺこりと頭だけお辞儀をした。
「・・・死神さん?」
「はい死神です」
そう言われてもにわかには信じ難いだろう。
目の前にいるのは丁度20歳そこそこの端正な顔立ちをした青年だからだ。
青いジャケットに白いTシャツ、黒髪短髪に中性的な顔立ち。
「・・・死神さん?」
「だから死神ですってば」
私はもう一度彼の体隅々までを舐めるように見る。
擽ったそうに死神さんは身震いした。
「自称死神さん・・・?」
「公式ですよ」
死神さんは細い腕を組みトントンと人差し指で片方の腕を叩く。
というか公式の死神さんって何だ?
「私は死神なんですけどね、まあ一応・・・、なんて言うか貴方を見送りに来たんですけど・・・。まあ言っちゃうと貴方あと1週間で死にますよ」
WOW、マジかよ。
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