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特に問題の報告はなく、驚くほど平和に初日は過ぎていったのだ。
七組は問題児の集団なんかじゃない。
放課後になり、茜は今日一日を振り返ってそう確信した。
今朝、自分が転んだ時に心配をしてくれた女子は藍沢さん。
彼女は成績も良くスポーツもできて、クラスの人気者でやさしく、美人ときた。
さらに彼女の隣の席の男子、茜を『ドジっ子』呼ばわりしてきた井上君も、特段、教師に反抗的だとか問題を起こす生徒ではなく、むしろ優等生側の人間。
その二人だけではなく、他の生徒たちも基本的に優等生とか大人しい生徒ばかり。
「もちろん、これで完全に安心したわけじゃないけど」
茜は帰宅途中、自転車をこぎつつそう独り言を呟く。
元の担任教師が病気になったと言っていたけど、校長が詳細を躊躇したのは精神的に病んでしまったからなのかもしれない。
そうだとしても、その原因があのクラスのせいだなんて校長は一言も言っていない。
茜は自分を納得させるように大きく一つ頷いて、はたと気づく。
今日のことが不安で、昨日は買い物がろくにできていないし、朝もご飯を炊いてきていない。
そう思い出すと急に空腹を感じて、大通りを右折する。
スーパーで惣菜でも買って帰ろう。
茜は腹の虫の音を誤魔化すように、自転車のスピードを上げた。
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