観察日記

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「先生、これ生活ノートです」  次の日の一時限目の休み時間。  職員室に入ってきた藍沢がクラスの全員分のノートを持って、茜の席にやってきた。 「ああ、生活ノートね」  茜はそう言って藍沢からノートを受け取る。  生活ノートとは、簡単に言えば教師と生徒の一対一の交換日記だ。  生徒は家に帰ってから、この生活ノートに今日あったことや今感じていること、はたまた悩みなんかを書き、それを次の日の朝、日直に提出する。  日直がクラス全員分のノートを集めると、一時限目の休み時間に教師に渡し、教師が帰りのホームルームまでに生徒全員分のノートを見て、すべてにコメントをつけていく。  あらためて考えると大変なことのように思えるが、大抵の生徒が日記と言っても一行、せいぜい長くて三行ほどの短い文章を書くだけなので、目を通すほうのも楽だし、教師側のコメントも短文。  それを知っている茜は、ノートの山を呑気に見上げてから藍沢に聞く。
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