観察日記

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 茜が何事もなかったかのように素早く立ち上がると、一番前の席の女子が立ち上がる。 「先生、大丈夫ですか?」  心配そうな表情でそう聞いてくれたので、「大丈夫。ありがとう」と返すだけで精一杯だった。 「何もないところで転ぶだなんて、とんだドジっ子属性の先生だな」  女子生徒の隣の席の男子生徒が、からかうよう言った。  途端に、教室中にどっと笑いが起こる。 「もー! そういうこと言うのやめなよね!」  先ほど心配してくれた女子がそう言って、男子を睨みつけた。  男子はまったく意に介していない様子だったが、二人の様子は険悪という雰囲気ではない。  いつものやりとり、というふうに茜には見えた。  教壇の上までたどり着いた茜は、ホッと胸をなでおろす。  なんだ、普通のクラスだ。  しかし、そう思おうとした途端に、一週間前の出来事を思い出す。  あの不安な感じとか、実際の校長の態度、口調、そのようなものを総合すると、このクラスは『問題児の集まり』という結論になってしまうのだ。 「気は抜けないな」  茜は小さく呟き、心のざわつきを抑えつける。
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